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『みぃ』への贈り物『バレンタイン編9』 【ほのぼの】
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僕は唇を離すと、申し訳なさそうに幸也に瞳を向けた。
「ごめんね、ありがとう」
僕の言葉に幸也は、優しく笑む。
リビングに移動し、2人でソファーに腰を下ろした。僕は、ガラスのテーブルの上に置いていた箱を手に取り、幸也へと差し出した。
「ゆき……好き、です」
冗談のように告白をするつもりだった。でも、『好き』という響きに照れてしまう。
頬が赤く染まる。はにかみ、笑顔を浮かべた僕。幸也は、笑みを零す。
「一昨日、絢乃さんに教えてもらったんだ」
幸也がそっと、僕の差し出した箱を受け取った。
「それで立花の家に行ってたんですね。開けて、いいですか?」
僕は、少し緊張した面持ちでコクリと頷いた。
幸也は、しゅるっと結ばれたオレンジ色のリボンを外し、蓋を引き上げた。格子状に並べた茶色と白の6個のキューブが顔を出す。
「綺麗ですね……でも、手作りは嫌いって言ってませんでしたっけ?」
幸也は、不思議そうな面持ちで瞳を僕に向けた。
「……僕、悔しかったんだ」
ぼそりと呟いた言葉に、幸也は先を促すように、黙って僕を見つめている。
「去年…手作りのチョコ、おいしそうに食べてたから。なんか、負けた、気がして……」
上目使い気味に見上げた幸也の顔は、瞬間、少し驚いた表情を見せた。
幸也は、ははっと声を立てて笑い、言葉を繋いだ。
「あれは手作り風のもので手作りじゃないですよ。会社の後輩にもらったんです……いろんな人に配っていたし、本人にもちゃんと恋愛感情はないって伝えてあります」
幸也の手がするりと僕の頬に触れた。ちゅっと僕の額にキスを落とす。
チョコをテーブルの上に置き、僕の頬を両手で優しく包む。
「俺にはこんな素敵な恋人がいますから。よそ見なんてしませんよ」
額と額を合せ、幸也は幸せそうに、ははっと笑った。
自分のちょっとした嫉妬心に、僕の顔は赤く色づいた。
何かを思い出したように幸也は、ゆるりと腰を上げる。寝室に入り、右手を背中の後ろに隠し、戻ってきた。
「みぃ、手を出して下さい」
僕は言われるままに右手を幸也の前に差し出した。ぽんっと置かれたそれに、僕はきょとんとした顔になる。
「去年の手作り風チョコの彼女から、『みぃ』にバレンタインの贈り物です」
瞳を瞬く僕に、幸也はくすくすと笑う。
僕の手の上に置かれたのは、透明の袋に入った猫用のおもちゃ、だった。
「彼女は、みぃのこと猫だと思っているので……」
幸也は複雑な表情で、僕の隣に腰を下ろした。
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