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ろくでなし 3
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「ってめぇ!なにすんだよ!」
痛む箇所を抑えながら、ホストもどきが声を荒げる。
「店の前でうっとおしい真似してんじゃねぇ」
「あぁっ?!てめぇに関係ねぇだろうがっ」
「わめくな、うぜぇ」
「なんだとてめ…」
「あぁ?」
低い声を上げながら、突然現れた男が一段階段をのぼり、ホストもどきに詰め寄った。
「…っ」
何だろう、ホストもどきがうろたえてる。
俺より一段分上がったため、男の表情は俺からは見えない。
ホストもどきの視線がうろうろと彷徨い、ちっと軽い舌打ちをしてから、体をくるりと翻してそそくさとこの場を去って行った。
……なんなんだ。
って、えっと、これって助けてくれたんだよね…?
ホストもどきの姿がなくなるまで階段の上を見つめていた男が、くるりと振り返った。
……っ…う、わ…。
改めて目の前の男を見あげる。
切れ長のきりっとした、どこか危険な匂いが漂う目元が俺を見下ろしている。
軽く後ろに流された黒髪に筋の通った鼻梁、薄い唇、そして野性味感じさせる雰囲気を持つ男。
ドクリ、と胸が鳴った。
……かっこいい…。
そう。
俺の好みどストライクは、まさに目の前にいる男。
爽やかな奴でもなく、遊び人風でもなく。
どこか負のオーラを漂わせる、危険な香りのする男が、好き。
ドク、ドク、ドク。
心臓が脈打つ。
「おい」
「っ、は、はい」
「怪我、ねぇか」
「はいっ、あ、あのっありがとうございますっ」
「今の奴、ちょっとタチわりぃから。 見かけたら気ぃつけろ」
そうだったのか。
「はい、ありがとうございます」
「じゃあな」
再び店の方に向かって階段を降りていく男。
このままで終わらせたくなくて。
俺はその後ろ姿に向かって、声をかけていた。
「あのっ、名前、教えてくださいっ!」
新見時生、と名乗ったその男。
教えてもらった名前を心の中で繰り返した。
それから俺はお礼がしたいです!と半ば強引に電話番号を聞き、そしてこれまた強引に約束を取り付け、接触を試みた。
人生で一番、積極的だったと思う。
それほどまでに、時生さんに惹かれた。
一瞬で、恋に落ちた。
だから、二回目に会ったそのときに、あなたが好きです、って勢いのまま、想いを告げた。
わずかに目を瞠って、俺をじぃっと見つめる時生さんにドキドキしながら返事を待った。
やがて時生さんから返ってきた言葉は、「俺はやめとけ」だった。
そんな返事じゃ納得できない俺は、食い下がった。
それに返ってきた言葉は、俺の胸をえぐった。
「お前に興味ない」ってそりゃもうバッサリ。
それでも俺は諦めきれなかった。
何度も何度もアタックして。でもの度にバッサリ切られた。
それでもしつこくつきまとい続けた。
あのバーを紹介してくれた友人は、言う。
その男のどこがいいのかさっっぱりわからない、と。
なぜなら時生さんみたいな男を、世間一般では──″ろくでなし″というからだ。
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