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仁科先輩と亜綱 4
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「他のやつに告げ口って言われるから嫌だ」
亜綱は言った。
「でも、言おう?」
「そしたら、俺のこと好きになるか?」
亜綱は、さっきは、好きにならなくてもいいなんて言ったくせに、やはり、仁科先輩に好きになってほしいのだと思った。
「黙っていたら、嫌いになる」
と仁科先輩は答えた。
「言ったところで、嫌いだろ?」
亜綱は、悲しそうに言った。
「そうでもないよ」
仁科先輩は、あいまいに言った。
「俺に言わせようとして、そんな風に言うんだな」
亜綱は疑り深かった。
「仁科が嫌がることばかりしてるのに、嫌いでなくなるわけないだろ?」
「だったら、嫌がることしないでよ」
仁科先輩が言った。
「嫌がることでもしなかったら、俺に関心もってくれないだろう?」
「嫌われるよりましだろう?」
「嫌われた方がいいよ。なにも思われないより」
「そんな考えのやつ、嫌いだ」
仁科先輩が言った。
「わかったよ、行くよ」
二人がこっちに来そうだったので、僕たちは、走って逃げた。
一階に降りると、校長室から、俊也先生が疲れきった顔をして出てきたところにそうぐうした。
僕は、
「俊也先生!」
と言って、抱きついた。
「先生、大丈夫ですか?」
先生は悲しそうに微笑んだ。
先生は次の日、学校に来なかった。
僕は克樹君といっしょに仁科先輩の教室に行って先輩に会った。
「先輩!」
僕は、仁科先輩に抱きついた。
「ここだとまずいよ」
仁科先輩が困ったように赤くなって言った。
「生徒会室に行こう」
仁科先輩は僕たちを連れて行って話した。
「あれから亜綱を説得して、教頭先生に話したんだけど、だめだった。俊也先生は自宅謹慎処分だって」
「そうなんですか? クラスで何の説明もなかったですよ」
「一週間らしいから。その後は、よくわからないけど。将来の査定には響くんだろうな」
「将来って?」
「教務主任、教頭、校長、教育委員長、が先生の出世コースだけど、問題おこすと、校長先生とかになるの難しくなるかもな」
「そうなの?」
僕は悲しくなった。
「俊也先生が教師の方が悪いのは当然ですって言ってきかなかったんだよ。そういうだろうとは思ったんだけど」
「亜綱の仲間は謝ったの?」
克樹君が聞いた。
「ううん、あいつら知らないふりしてる」
廊下で物音がするのでのぞくと、ちょうど、三年の亜綱の子分たちがいた。
見ると亜綱航平が廊下に転がっていて、二人の子分たちに蹴られていた。
「ちくりやがって」
「自分ばっかりいいかっこするなよな」
「亜綱が言い出したんだから俺たち関係ないね」
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