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白金スパーク
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「悪いが。もうコレ以上リスクは冒せない。…終わりにしよう」
気温が体温と並ぶ勢いの昼下り。
目の前で放たれた言葉のあまりの冷たさに、親友共々俺は固まった。
だって。
コイツ、トウマの彼氏ぢゃん?
…リスクって、何だよ?
「ゎ、かりっ、ました…」
絞り出すような声が聴こえたかと思うと
俺の親友は、俯いたまま、足早にその場を後にした。
慌ててその背中を追った俺は、一瞬で彼氏と擦れ違った。
視界の隅に光るモノが流れる。
…え、プラチナ?指輪か!?
咄嗟に見分けがついてしまう己の動体視力にまで、舌打ちしたい気分になった。
大人の狡さ
親友の寡黙さ
そのどちらにもムカついて、イライラが止まらない。
ジリジリと焼かれてるのは、身体だけじゃないような、そんな錯覚に陥った。
「…ッ!」
突然。
トウマが足を止めた。
橋の上から、水面、いやそのずっと遠くを睨み付けるように、見つめてる。
「…アチぃ」
ものの30秒で我に返ったように、再び歩き出した。
「ここ、入らね?」
氷の文字がはためく喫茶店の前で、振り返った親友はぎこちなく笑んでいた。
「そーいや、昼飯、まだだったもんなー?」
涼しい店内で水分とカロリーをガッツリ補給すると、イラつきは収まったが
入れ替わりに、別の感情が俺の胸へ広がり始めた。
この暑さにやられたのか?
アンニュイなトウマがヤバい。
儚げで、それでいて凛としていて。
そんな親友を
そっと後ろから包んでやりたい、だなんて。
一体どうしたんだ!俺っ!?
その後、俺たちは宛もなく歩いて、ゲーセンや、本屋を何軒かハシゴした。
トウマとは、どうにかこうにか、いつもの距離を保って家路を辿る。
坂道を上がりながら、ふと、見えた教会のトンガリ屋根に。彼氏の去り際に見えたプラチナが過った。
連想したのは、結婚式だ。
…リスクって、つまりは、そーゆー事かよ!?
チッ
舌打ちした瞬間、色んな気持ちがごちゃ混ぜになって、スパークした。
愛だか
永遠だか
知らねえが
今ソコに
すぐ救わなきゃならない魂ってヤツがある。
笑われたって
構うもんか。
アイツがずっと出来なかったことを
今すぐ俺がやってやる!
挑むような気持ちで口にした言葉は、案の定、冗談にされちまったが。
勘の良い親友を励ますことくらいは出来たらしい。
キスする、だなんて柄にも無い悪フザケに、キッチリ乗っかってやったら。
アイスを食おう!と逃げるように走り出した。
この気持ちが何であれ
今の俺にはリスクだとは思えねえよ。
むしろ、ワクワクする位だ。
よく分からない高揚感のまま、一気に坂道を天辺までかけ上がる。
帰宅部の親友には悪いが、バスケ部の意地とスタミナはキッチリ見せ付けとかないとな。
「ヘヘッ!俺の勝ち~」
「ちっ!バスケ馬鹿め!!」
少し調子を取り戻した親友と
肩を並べて食べるアイスは格別の味だった。
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