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離・フブキ
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動画再生回数がどうとかで
朝の情報番組に取り上げられた映像を見て、オレは目を見開いた。
―アイツ。
見間違えようもない
同級生は、さも気持ち良さそうに、飛んで跳ねて、自由に踊っていた。
あの頃よりずっと伸びやかで、強く光る姿…。
心の底から、妬ましいと思った。
もうオレには取り戻せないモノが、そこにはあったから。
早朝の公園でたった5分。
それだけで、こんな風に注目を集めてしまう、アイツが憎い。
―今度は、どうしてやろうか?
剃刀入りの手紙は、もう何十回となく、送ったし。
脚を切って真っ赤に塗ったマスコットを、郵便受けに一ヵ月毎日入れ続けたこともあった。
バイト先の同僚やダンス仲間に、コッソリ有ること無いこと吹き込むなんてことは、アイツの知り合いが減った今じゃ、もうあまり効果無いしなぁ。
取り敢えず、親しいらしいコーコーセーには
ムショ帰りだとだけ、言っといた。
明日は、職場にチラシ撒いてやるか。
車のフロントガラスに赤ペンキでHGって書いた時は、爽快だったよな。
地方の住み込みバイト先へ、代引きでバイブと貞操帯を送りつけたこともあったっけ。
あの後しばらく顔見なかったから、ようやくしんだかと思って喜んだのに。
ただの入院で、ガッカリだった。
「叶多くん。」
呼ばれて振り返る。
「ん?なぁに、先生。」
「まだ忘れていないのですか。」
「当たり前ですよ。」
―まだ10年だ。
「もうやめましょう。無意味なことは。」
「厭です。アイツだけは絶対に許せない。」
やっと落ち着いたと思ったのに。
アイツのやった事件の原因だとつつかれて
復帰のチャンスをフイにされた。
オレとの仲を誤解したあの人と気まずくなったのも、アイツのせいだ。
それまでは良い友達だったのに。
その後は最悪だった。
「ねえ、叶多くん。」
白衣の人がそっと、おれを呼んだ。
「なんですか?」
「いつになったら、僕の名前を思い出すんです?」
「思い出しませんよ。
だって、必要ないし。
それにおれ、最初からあんたのことなんか、知らないもん。」
「なん、だとっ!?」
コチラをみた先生は、夜叉みたいな顔をしていた。
そりゃそうだ。
10年面倒みてきたのにね。
怒った先生に窓から突き落とされそうになったから、必死で交わしたら、入れ代わりに先生が落ちてった。
―あーあ…面倒くさいなー。
後始末を考えたら、思わず溜め息がでた。
―あ、そっか!
全部アイツの仕業にしてしまえばいい。
動かぬ証拠というやつを仕立てるために
おれは宵闇の中を笑いながら走った。
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