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「カゴノナカノトリハ」
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空が白から青に変わり、やがて茜から藍に移る。
気怠く窓枠に凭れながら通りに目を遣ると道行く人の類も変わり、少しずつ増えて時折こちらを見上げる。
「…………」
僕が口元に淡い弧を描くと慌てて目を伏せるか顔を赤らめて立ち尽くす。大抵そうだ。
「雅。そんなとこで油を売ってるくらいなら下に降りて客を呼べ」
「……もう呼んだよ」
僕に見蕩れた一人の男が店の暖簾を潜った。
直後に禿が僕の部屋を訪れて客の入りを告げる。
「大した花魁だな」
ここ、華月の廓主である伊月は鼻に掛けた笑みを残して部屋の前を通り過ぎていった。
────ここは日暮れが朝。夜明けが晩。
夜の闇が煌びやかに彩る街。
僕はだらしなく開いた胸元と裾をそのままに艶やかな羽織りに身を包んで階段をおりる。
口元には微笑みを絶やさず貼り付け、飽くまでも振る舞いは着物は翻さないよう、優雅に。繊細に。そして妖艶に……。
「雅と申します。旦那、今宵は存分に可愛がって下さいませ」
ここは遊廓。欲の吐き溜まり。僕らはこの街で身を焦がしていく。
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