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蓮視点
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「蓮」
「…………」
「……。蓮、れん、れーん」
「え?あ…、何か用事?」
「"何か用事?"じゃないよ。さっきから何ぼーっとしてんの?」
篠田さんを送り出した後、部屋を掃除して二度寝した蓮を叩き起こした俺は雅が風呂から戻った事にも気付かず、ただ部屋の窓から通りを見下ろしていた。
「お前、ここから見下ろすの好きだね」
俺の隣に来た雅は長襦袢一枚を羽織って窓枠に肩を預け、濡れた髪から水滴を滴らせる。
気怠そうに緩めた口元に伏し目がちな視線。
本人に全くその気はないそうだが、何をしていても香り立つ色香がある。
「別に…好きじゃない。何となく見てただけだ」
「……どうだった?」
「何が」
「夕べの感想。お前はあの光景を見てどう思った?」
唐突な質問に言葉が詰まる。まさか感想なんて聞かれるとは思ってもおらず、何も用意をしていない。
そんなしどろもどろする俺を想定してたのか雅はクスッと笑みを零し、手を伸ばしてきた。
そして白くしなやかな指先で俺の目尻を撫でる。
「少し目が腫れてる……泣いた?」
「っ──」
「気持ち悪かった?自分もいつか同じ事をするんだと思って怖くなった?それとも両方かな」
「っ!あんたは……いいよな。そうやって何とも思わずにいられて…!」
確かに間違ってない。雅が言った事は俺が感じた事だ。
けど泣いたのは……雅が他の男に抱かれるのを見たから。
見るのが嫌で目を反らしたいのに反らせない程魅了されて…。
「でもあんたは……綺麗だった」
そう思った自分自身が何より嫌だった。
「!……ぷッ……ははははっ!綺麗だって!あははははっ!」
静かに流れる時を切り裂いて雅の馬鹿笑いが部屋に響く。
何が起こったのか理解できなくて俺はしばらく呆けていたが、漸く自分が恥ずかしい言葉を口にした事に気付いた。
「なっ…何だよ!思った事言っただけだろ!何が悪い!?」
「違うよ、凄いなと思って」
「……凄い"バカ"って事?」
「クククッ、それも違う。少なくとも僕は初めて見た時、綺麗だなんて思えなかったからさ」
やっと笑い終えた雅は疲れたように腰を据えた。
……そうだ。ここにいる娼夫は皆"初めて"の時があったんだ。
だったら雅はどう思ったんだろ…?
「あんたは……どう思った?初めて見た時…」
「う~ん……おぞましいと思ったかな。見るのもヤるのも真っ平御免って感じで」
意外だった。雅みたいな奴ならもっと冷めた印象で、"こんなもんか"くらいの感想を想像してたのに。
だったら何が彼をここまで押し上げたのか、自分でも驚くほどそんな事に興味が湧く。
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