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蓮視点
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「慣れるもんなのか?どこかで割り切れるとか…」
「慣れる…か。確かに躯は慣れるし覚えるよ。だけど全ては気持ちの問題。何回抱かれても嫌悪感は消えないし、何かの拍子にそれがお客に伝わる。例えば僕らが勃たなかったりとか」
「だったら…気持ちを切り換える?」
「んー。普通はそうかな。でも僕を飼ってた花魁はそうじゃなかった。心で接客する感じ」
雅は胸に掌を当てて静かに目を閉じた。
その人を思い出してるんだろうか?とても穏やかな表情をしている。
「僕らが相手にするのは化け物でもロボットでもない。心を持ってる人間なんだ。悲しくて泣いたりもするし、嬉しくて笑ったりもする。大事なのは受け入れる事。」
「でも……男だぞ」
「相手が男でも女でも関係ないよ、人間としてその人に接するんだから。皆何かを抱えてて、それが抱えきれなくなった時にここへ来る。そして良い事も悪い事も吐き出してまた現実に戻っていく。僕らはその背中を押してやるのが役目なんだよ」
これはもしかしたら雅がその花魁から言われた言葉なのかもしれない。
直感的にそう思った。
今の雅にはこの言葉が理解できてるんだろう。
納得はできない。けど、拒絶で固められていた俺の心が少しだけ柔らかく解ける様な心地がした。
「俺……あんたみたいになれるかな」
「あー、ムリムリ。蓮じゃ僕みたいになんてなれないよ」
「っ、即答しなくても…」
「だって根本的な物が違う。僕は初めて接客を見た時、その場で吐いたからね」
「……は?」
「それに水揚げの時はそのお客を蹴って部屋から逃げ出した。まぁ結局抱かれたんだけど」
「…………。スゲーなアンタ…。ってか自分を蹴った相手を抱いた客もスゲー…なんか、根性あるな」
「だよね。ちなみにそれ、篠だよ」
「篠田さん!?」
「うん、今では笑い話。だけど吐いた時は大変だったなぁ。僕を飼ってた花魁に逆さ吊りにされて一晩中擽られてさ、本当に死ぬと思ったよ」
「……変わった人だな」
どちらも本来なら殺されても仕方ないくらいの事だ。
でも雅はこうやって生きてて、今は売れっ子の花魁になってる。
相当運が良いのかもしれないけど、俺は何となく彼自身の人柄が引き起こした奇跡なんじゃないかとも思った。
俺には到底無理な話だ。
「…お前にはムリだよ。だってお前は僕以上の花魁になるんだから」
「っ何言い出すんだよ…!?それこそ無理だろ!」
「なれるよ。だって蓮は僕が選んだんだから。……だからバカな真似はやめなよ?」
「…!?」
「思い詰めた目をしてたからね。何となくそう思って」
こいつには適わない。
簡単に心を見透かされて悔しいはずなのに不思議と清々しい気分だ。
華月を担う1人の花魁────その存在の大きさを改めて実感し、同時に彼に対する憧れにも似た恋心がより一層大きくなった。
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