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月の無い曇天の夜が更けた頃。
眠りの浅かった僕が篠の腕の中で夢と現実の狭間を漂っていると、こちらに近付く足音が現実へと引き戻した。
「……雅、起きてるか?」
「…!伊月…」
「入って来いよ伊月。俺は構わねえぜ」
篠も眠りが浅かったのかすぐに目を開けてそう答える。
すると小さな物音を立てて襖が開き、伊月は外から戻ったばかりの出で立ちで部屋に入り腰を下ろす。
「蓮……どうだった…!?」
「どうもこうも…憔悴しきってた。中が傷付き過ぎてて2、3日経過入院だそうだ。よっぽど手荒に扱われたんだろうよ」
「そうか…。可哀想に……辛かっただろうな」
「っ……」
許せない…。八千代もそいつらも…必ず後悔させてやる…!
僕は膝の上で固く拳を作りそう誓った。
けれど、けしかけただけの八千代に関してはあまり非を問うことはできないのが悔しくてたまらない。
最終的に判断を下したのは蓮自身なんだから…。
「伊月、お前がいない間に俺達なりに探ったんだが…。どうも八千代が一枚噛んでるみたいだぜ?」
「あ?どういう事だ?」
「あいつが……、蓮が外に出るようわざとけしかけたんだよ。帰りが遅い光を"すぐ戻らなかったら躾ないと"って蓮に漏らしたって…」
「俺も雅と一緒に聞いたが、あれは悪意のある口振りだ。…笑ってたしな」
「…………」
「って、聞いてんのか伊月?」
「…っせぇ、ちょっと黙ってろ」
伏し目がちに腕を組み、伊月は黙り込んで何かを考え出した。
一体何を?蓮の事?八千代の事?それとも────
「篠崎、犯人の目星は」
「数時間前の話だぜ?さすがにまだ何とも。だが、さっき連絡して尻を叩いといたから明日には何か持ってくるだろ」
「……そうか」
「…ねぇ、さっきから何なのさ伊月?勿体ぶらずに言いなよ」
痺れを切らせて僕が急くと、伊月は溜め息を吐いて渋々といった様子で口を割った。
「今はまだ何もしねえって約束できるか?」
「!……できる」
「……だったら教えてやる。蓮を襲った男は2人で、そいつらを雇った奴がいるらしい。それが誰なのかは分からなかったそうだが」
「それ……誰から聞いたの?」
「蓮本人から聞いた。お前を見舞いに来させないって条件でな」
「っ!?何で勝手にそんな事を──!?」
「あいつから聞き出す為だ、そう怒るなよ。何も金輪際会えなくなる訳じゃねえだろ」
「雅、今の話は区警でも聞き出せなかった事だ。捕まえた犯人が仮に口を割らなかったら、裏にいる奴はそのままお咎め無しだっただろうよ。今回は伊月の機転が正しかったって事だ、許してやれ」
篠にまでそう言われたら返す言葉が見つからず、僕は納得いかないまま口を結ぶ。
でも確かに伊月が聞き出したお陰で八千代の線が濃くなってきた。
後は犯人が捕まるのを待って、彼らに真相を吐かせればいい。
残る不安は後一つ。
「蓮を……どうするつもり…?」
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