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「悪気があった訳ではない!だがあんたの気に触ったのなら謝る、悪かった…!」
「…………」
僕の手より一回り大きな手が逃げないようにしっかり掴む。
この男はさっきバーで言い合った男だ。
彼はなぜか妙に焦った様子で無言の僕に再度口を開く。
「っ、何とか言ってくれ」
「……それだけ?」
「それだけ…とは?」
「僕に謝る為だけにわざわざ追ってきたの?」
「そうだが……?」
「…………腕。痛いんだけど」
「!すまないっ…」
本当に悪いと思っているのか、男は申し訳なさそうに眉を下げしょぼくれた顔をする。
正直ケンカを吹っ掛けられるかと警戒した僕は呆気に取られ、ふと笑みが溢れた。
「な、なぜ笑う…?」
「あぁ、ごめんごめん。別に僕の事なんか気にしなくていいのにって思ってさ。あんた、音は良い奴なんだね。いいよ、僕も大人気なかったしこれでお互い様。じゃあね」
「あ、待て…!」
「…!今度は何?」
離れた手がまた僕の腕を掴む。今度は手首だ。
その手があまりに暖かくて僕の心臓がドキッと大きく跳ねた。
「その…、あんたは……、この街に住んでいるのか?つまり…」
「花妓かってこと?」
「!…あぁ」
嘘なんていくらでも言える。
実際、廓の外で自分が花妓だなんて言ったらどうなるか簡単に想像がついた。
けど、真剣に問う彼の目は僕に欺く事を忘れさせた。
「そうだけど、それが何?」
「…!どこへ行けば…あんたに会える?」
「!?へぇ…。つまり、あんたは僕を抱きたいの?」
「そっ、それは……」
顔を真っ赤にして俯く男に胸の奥を擽られてる気分だ。
なんだろう?なんか楽しい。
「あー、違うんだ?だったら言う必要なんか──」
「っ、あんたなら…!他はそう思えないが、あんたなら……抱きたいと…思う」
「っ……」
こんなに真っ直ぐな眼差しで求められた事はない。
からかったつもりが、心臓は壊れそうなくらい煩く鳴り響いて体の芯を疼かせる。
「……いいよ。でも今日は僕、休みなんだよね。だからホテルでもいい?」
「っ……任せる」
たじたじと口籠る彼の返事に笑顔を返し、僕は掴まれた手を解いて今度は僕が彼の腕を引く。
彼に何を教えてあげよう?
男の良さ?快楽?それとも乱れた僕の姿?
そう考えながら歩く僕の胸はいつになく弾んでいた。
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