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《第二節》学校で
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翌朝、通学途上、学校で潤に会ったら、どんな顔をすればいいのだろう? と考えた。普通に挨拶すればいいのだろうけれど、昨日のことを思うと、気恥ずかしかった。
潤は、いつものようにショート・ホームルームが始まる直前の時間に、前のドアから教室に入ってきた。まだ教室はざわめいていて、扉近くにいた生徒が、潤の行く手をふさぐように片手で抱きついて
「潤、お早う」
と言った。僕は軽く嫉妬した。僕の潤に勝手に触るな。潤は、
「お早う」
と返して、窓際前方の自分の席に行き、机に鞄を置いた。潤の席の近くにいた生徒が、潤のお尻を触った。
「よっ、潤」
とか何とか言って、潤と何か話していた。僕は廊下側の真ん中あたりの席なので内容は、聞こえなかった。僕は嫉妬にむかむかした。僕が、こんなに見てるのに、潤は全然気づかないんだから。
潤は、鞄を机の脇に掛けて、着席した。潤が、少し後ろを振り返った時に、僕と目が合った。僕が、笑いかけようとしたら、目をそらされた。
僕は失望し、憤慨した。何なんだよ、その態度は。目をそらさなくたっていいじゃないか。でも、見てなかったのかも、と思いなおした。
ショート・ホームルームが終わり、授業前に、廊下に出た時に、ロッカーから教科書を出している潤に話しかけようとしたけれど、他の人に邪魔されて話しかけられなかった。
そうやって、その後も一日中、機会をうかがっていたが、潤は僕と目も合わせようとしなかった。
潤は、昨日のことに対して、何もなかったふりを決めこんでいるようだった。
もともと潤とは口をきいたこともなかったような関係だったのだから、急に親しげに振る舞ったら、周りから不審に思われるかもしれないけれど、でも、あんなことがあったんだから、それだって、明るく肯定してくれたっていいのに、と無視されているみたいで悲しくなった。
けれども、僕も、校内で、昨日のように潤にもてあそばれたり、下手に近づいて勝手に発情してしまうわけにはいかなかったから、少し寂しかったけれど、これで正解なのかも、と少しほっとする気持ちもあった。
進学校なので授業が教科ごとに学力別で教室移動しないといけなかったり、同じクラスでも、いつも一緒なわけではなかった。そして、授業時間が長い分、休み時間が短くて、授業の進みも速かったので、予習復習や、家でできなかった分の宿題をしていたら、ゆっくり話せる時間なんてなかった。それにしたって、一言声をかけるくらい、してくれたっていいのに、と恨めしく思った。
結局のところ、僕は潤が恋しかったので、どうしても潤と、何か個人的に二人きりで話したくて、下校時を待った。潤は、たいてい一人で帰っていたので、帰り道に潤と話す機会はありそうだった。僕は教室で、潤が、いつ帰るのか、今か今かと待っていた。そして潤が教室を出ると僕は、さりげなくあとに続いた。
潤の今日の態度から、皆には、潤との関係を知られない方がいいのかなと思ったから、学校から離れるまでは、少し距離をあけてついて行こうと思った。
離れていても、潤の後ろ姿を見失うことはなかった。華奢な潤の肩、きれいな姿勢、美しい伸びやかな肢体、すらりと伸びた長い手脚、身体の割りに大きな手。全て、僕の心の印画紙に焼き付けられてあったから。
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