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《第三節》昼休みのナンパ
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その日は土曜日だが、授業はあった。
「君、ちょっと」
昼休みに、お弁当を持ってこなかったので学食にパンを買いに行ったら、猛ダッシュで買いに来ている運動部の部員たちに買い占められていて、ほとんど売り切れていた。残っているのは、人気のないパンだけだ。それも迷っているうちに、他の人たちに次々買われてしまった。ぼんやり突っ立っていると、
「やるよ」
僕の前にパンが差し出された。僕は目を上げた。三年生のバッジが目に入った。
「いいんですか?」
僕は、おずおずと聞いた。
「俺は、弁当も持ってきてるから。そのかわり、渡り廊下でいっしょに飯食わない?」
うわっ、ナンパだ! 潤の観察でよく見ていたけれど、まさか、自分が誘われるとは! まてよ、一年の頃から今までこんなことは一度もなかったのに、おかしいぞ? 僕が最近、潤とつるんで(一番目の意味でなく)いることと関係あるのかも。僕は警戒した。僕が答えないのに痺れを切らしたように三年生は言った。
「あのさ、俺の顔覚えてない?」
ええと、誰だっけ。こわくて上級生の顔なんてまともに正面から見たことないよ。
「すいません、僕、人の顔を覚えるのが苦手で」
「そうか。まあいいや」
三年生は僕に有無を言わせず、僕の腕をつかんで僕を引っ張っていった。ど、どこに行くんだ? な、なんで、この人に連行されないといけないんだ? 僕に拒否権は、下級生に人権は、ないのかあー!? と思ったけれど、パンにつられてしまった。
歩きながら三年生は聞いてきた。
「あのさ、君、最近、潤君と仲いいよね?」
ほら来た! やっぱり潤とのことだ。
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