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三年生に口説かれる
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「昨日は頭にきたけど。潤を君に横取りされて」
「あっ、あの時の」
いま目の前にいる、僕をナンパした三年生は、昨日、校門付近で潤を口説いていた人だと、僕は、ようやく思い出した。
「すみません!」
僕は、メンツをつぶされて腹を立てた上級生が、生意気な後輩を「指導」しに来たのかと恐々とした。
「潤との仲を、とりもってほしいと思ったんだ」
え?
「でも、こうして見ると、君も可愛いね」
ええっ?
「潤とは、また違う感じで、いいよ。ピュアな感じが可愛いね」
ほんとにナンパ?
「潤も、前は、天使みたいだったんだけどね。今では、すれっからしみたいな殺伐とした雰囲気になっちゃって。それもまたアンニュイでいいんだけどさ。それに、前よりずっとエロティックだからね」
潤が天使……。エロ化した潤しかしらない僕は、ピュアだった、かつての潤を知ってる人たちが、うらやましくなった。僕だって、そういう潤がいいよ! エロエロ潤に、すっかり遊ばれてる僕。過去の潤まで、全部自分のものにしたい! 独占したい。なのに、みんな僕の知らない潤を知っている。ずるい。僕だって同じクラスだったら、同じ中学だったら。潤と同じクラスだった人がうらやましい。同じ中学だった人が潤について語るとムカムカする。潤とずっといっしょだったらよかったのに。この人も得意げに僕の知らない過去の潤を語る。僕が知らないからって。
そうだ。でも、この人は、今の潤を知らない。僕と二人きりで喫茶室にいる潤のことは、クラスの誰も知らない。全世界で僕だけしかしらない。
「……ほんと君って可愛いよね」
三年生は、ずっと僕のことをべた褒めにほめていたようだった。髪を撫でられそうになったので、よけた。
「潤が思わず、君と遊んでみたくなるわけだよ」
遊んで! やっぱり、はたから見ても、そう見えるんだ? 図書室でプラトンについての本を借りそうになっていた自分バカバカ。そうだよなあ。プラトンが……なんて言いながらエロしかしてないし! エロースは……とか言ってエロしかないくせに。何が愛の階梯だよ。エロの階梯だろ! 変態行為の追求だろ! 僕は、潤に腹が立ってきた。
「ねえ、二人で、どんなことしてるの? 教えてよ」
「いえ、何も」
潤の、はったりと偽善を外側から指摘され、自分のことを差し置いて、潤に腹を立ててみたものの、やはり、せっかく手に入れた、秘密の関係を人には言いたくなかった。いつもみんなから、子どもっぽいとか、この人も、僕のことを何も知らないピュアな少年とか思って可愛いとか言ってるんだろうけど、僕は、もう、潤とエッチなことしちゃったんだからね、という優越感をしばらく味わっていたかった。
「そんなわけないだろう。君だって聞いたことあるだろう? 潤の噂。ああ、下の学年には知られてないのかな。潤は、年上好きだからね」
なんだか挑戦的だ。僕のことをさんざん褒めたのも、余裕を見せたいから? 信用できない。
「ねえ、潤とは、もう寝たの?」
「いいえ……」
「へえ、案外堅いんだな」
三年は、不思議そうに言った。わざとらしい。寝た方が勝ちみたいな。別に僕は、潤と早く寝る寝る合戦なんになんて参加してませんから。
「君は、恋愛経験がないんだろう?」
「はい……」
「やっぱりね。そんな感じがする。そのせいか」
上級生は納得したように、一人頷いた。ムカつく!
「いいね、気に入ったよ。どう? 俺と付き合わない?」
えっ、まだ言うか。お断りです!
「いえ、僕はあまり」
「ああ、やっぱり潤の方がいいか。わかった。潤は潤でいいよ。どのみち向こうは、君とだけ付き合っているわけじゃないんだろう? だったら君だって、潤とだけ付き合うことはないよ。むしろその方が苦しまなくてすむんじゃないかな? どう?」
なに言ってるんだこの人。潤は、誰とも付き合ってないって言ってたもん。
「遠慮します」
「ピュアな君には、酷な話かもね。初めて付き合う相手が、複数と付き合うようなタイプっていうのは。その点、俺は、もし君が望むなら、君一人とだけ付き合うことにしても構わないよ? どう? 振り回されてつらい目にあうよりいいと思わない? 俺なら君を可愛いがってあげられるよ?」
「潤にも、そんなふうにおっしゃってたんですか?」
「違うよ。君だから言うんじゃないか。まあ、考えておいてよ。潤に振られて泣いてからでもいいよ。傷ついた君を優しく慰めてあげるから。身体も心も傷つくんだろうな。ああ、君をそんな目にあわせたくないけど、君自身が望むなら、誰もとめられないよね。僕は大いに、とめたいけどね」
ふん、余計なお世話だよ。おとといおいで。
後で、
「瑤、三年生と何を話してたんだよ?」
と級友に聞かれた。
「あの人、兄貴にしたい人ランキング、No.1なんだぜ? 去年、文化祭の役員をやっていたよ。男らしいし、スポーツマンでかっこいい。それにハンサムだしな」
「ああ、そう」
僕は、そうだったかな? と思い返した。僕は、潤にしか興味がないせいか、ぼんやりした面影しか浮かばなかった。
「てっきり、誘われてるのかと思ったんだけど。違うの?」
「うん、まあ、そんな話しだったけど」
どうでもいいよ。
「やっぱり。最近、瑤、色っぽいもんな。前は、子どもっぽかったけど、急に、艶っぽくなったよな。なんかあった? もしかして、あの先輩と、もう何かあったりして?」
とんだ誤解だ。
「ないよ。今日初めて話したばっかりだって」
僕が前と違って見える、か。それは潤のせいだな。間違いなく。そのことは、まだ誰も知らないんだ。僕と潤だけの秘密。
潤が学校でつれないのは寂しいけど、でも、こんな風に秘密を共有してる感じもいいな。早くみんなに自慢したい気もするけれど、当分は、邪魔されないように秘密にしておいて正解かも。
あの三年生には知られたから、それで、今日みたいに、僕と潤の仲を裂こうとしに来たんだろうな。そんな誘惑に僕が引っかかるわけないのに。でも気をつけよう。
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