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校門で
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潤は、校門付近で待ち伏せしていたらしき、自転車を引いた、同じ学校の制服の男に、声をかけられ、しつこくからまれていた。相手は、大人っぽい背格好で、肩幅も広く背も潤より高かった。たぶん上級生だろう。二人はもめていたので、校門を出てから、いくらも経たずに、僕は潤たちに追いついてしまった。近付いて見ると、バッジの色から、三年生だとはっきりした。
僕が上級生に挨拶すると、彼は気まずそうな顔をして、潤を口説くのをやめ、潤から離れた。
僕は、かわりに潤に近づいて、
「潤、いっしょに帰ろう」
と声を掛けた。
潤が、親しげな笑顔を向けて、
「うん、いいよ」
と応えた。
潤は並んだ僕の肩をだいて、ぐいと引き寄せた。さらに潤は、恋人のように、僕の腰をだいた。潤は、上級生に見せつけるように、顔を振り向けて、後ろを振り返った。
僕は、潤に腰をだかれて、嬉しかった。まるで潤の彼女になったような喜びが、僕の身内を駆けめぐった。そのまま、潤に、その場で激しくキスを求められても応じそうなほどに気分は高揚した。
上級生は、僕らのただならぬ雰囲気を察したのか、自転車に跨って、去って行った。
僕はほっとした。潤も安堵したように、息をついた。そして、悪戯っぽい顔つきになって僕を見た。
潤は、僕の腰にまわした腕を、ぎゅっとしめ、
「もう、これだけで、興奮しちゃった?」
と僕の耳元に唇を近づけ、妖しくささやいた。
「うん」
僕は、問われるままに答えた。全て、潤の言いなりになってしまいたかった。もし、この場で制服を脱げと命じられたら脱いでしまいたいような、幻惑された気持ちになっていた。潤は、僕の腰から手を離し、真顔になって
「昨日のこと、怒ってる?」
と聞いてきた。
「別に」
「なら、いいんだけど」
僕は、本当は、ちょっと怒っていた。
僕のファーストキスを奪っておきながら、さも、僕と恋を始めるようなそぶりをしながら、直後に前から親しい男のあることを見せつけるなんて、酷いと思った。けれど、潤は、最初から、キスは練習と言っていたし、僕と付き合うだなんて、一言も言っていなかった。それどころか、恋愛なんかくだらないと思っているようだった。勝手にロマンスを期待したのは、僕の方だ。だからって、全部、僕が悪いのだろうか?
「本当は、怒っているんでしょ?」
潤は聞いた。
「うん」
潤は、僕をちらちら見ながら言った。
「俺は、別に誰とも付き合っていないよ? コウさんは、別に付き合っている人がいるし」
「潤って、コウさんが好きなの?」
潤の方から、その名前を持ち出したので、この際だから僕は気になっていたことをたずねた。
「好きだけど、コウさんには、付き合っている人がいるから」
へえ、そうなんだ。なのに、あんなに二人でまるで恋人同士みたいにイチャイチャして。潤もコウさんって人も軽い男なんだな。自分の気持ちが嫉妬だとわかっていたけれど、やはり腹立たしかった。
「じゃあ、僕は何?」
「何って、クラスメイト」
「それだけ? 昨日、キスしたのに」
「キス? 結局してないよね? コウさんが帰って来ちゃったから」
「したよ、最初、ちょっとだけ」
「最初? だって、その時は瑤が拒んだから、しなかったじゃない?」
「だけど、ちょっとしたもん」
「ああ? まあ、ちょっとかすったかもしれないけど」
僕はむくれた。
「何で、そんなに怒った顔するんだよ」
「人のファーストキスを奪っておいて」
「あー、ごめん。それで、怒ってるの?」
「怒るよ」
「そっか。じゃあ、俺、責任とって瑤と結婚しなきゃいけないね」
潤が、茶化した。
「おう、結婚しろよ」
「いいの? 俺なんかで」
潤が笑って言った。
「いいよ」
「簡単に言うなあ。俺、男なのに」
潤が笑っていた。
「潤こそ、簡単に男にキスするんだな?」
「簡単にってわけじゃないよ。昨日だって、俺としては、自制して、何もしなかったつもりだったから」
「全然、自制してないじゃない。 めちゃめちゃ誘惑されたんだけど」
「別に誘惑してないって。瑤が勝手に発情しだしたんじゃないか」
「潤が、そそのかしたくせに」
「瑤が敏感すぎるんだろう? 触ってもいないのに感じてるんだもの」
と言いあって、互いに昨日のことの責任をなすりつけあっていると、洋講堂の前についてしまった。
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