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洋講堂再び 4
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「つらい?」
潤の声が、僕を気遣うように、耳元で聞こえたけれど、僕は、精一杯で、何も言えなかった。
「俺の視線は、メドゥーサより強力だったわけか。
鏡越しでも、瑤を、石化させたみたいだから」
夕闇のせまる、明かりのついていない室内で、二人の姿が、幻のように、潤の肩越しに見える鏡に、浮かんでいた。
潤は、腕をゆるめて、僕の腰を両手で支えたまま、身を離し、僕の顔を見て尋ねた。
「瑶、大丈夫? ごめん。やめようか?」
僕は、急に親密になったことへの恐れと恥ずかしさで、潤の顔をまともに見られなかったが、
「うん、ちょっと、ごめん」
と断った。
「俺は、焦らされるくらいが好きだから、平気」
潤は、僕の腰から手を離した。
潤の息は熱っぽかった。
僕は、潤が僕の名を呼んでくれたこと、僕への攻撃に似た性急な行為をやめてくれたことで、ほっとしていた。
潤は、僕から三、四歩離れ、ただ、ふいごのように呼吸していた。
僕もまた、立ち去るわけでもなく、ただ立ち尽くしていた。
しばらくして、お互いの息が少し落ち着いた頃、潤は僕の方をちょっと見て声をかけてきた。
「ねえ、瑶」
「何?」
僕が答えると、潤は再び僕の方へ歩を進めて僕の正面に来て言った。
「瑶のこと、好き」
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