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雨宿りのように
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バスタオルが、すっと水滴を吸い込んでいった。
潤の濡れそぼたれた髪が間近にあった。
僕らは、にわか雨に降られ、軒先で雨宿りする二人のように寄りそった。
あるいは、軽装のハイキングで天候の急激な変化にあって、木陰か岩陰で、濡れた身体を温め合う二人のように、寄りそった。
バスタオルにくるまれた僕ら二人は、揺りかごで泣き疲れた、双子の赤子のように、互いの擦りむけた心を共有していた。
淫らさの向こうにある潤のどうにもならない悲しみと焦燥と痛みを、僕は感じた。
「潤」
僕の目から涙が流れた。
「どうして瑤が泣くの?」
潤は言った。
「優しくできなくて、ごめん。どうしていいか、わからないんだ」
潤が言った。
交わしたキスに、僕は、潤の優しさを感じとった。
不確かな優しさを。
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