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遠回しに
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「あのさ」
僕は、前も言いかけたことを、もう一度聞こうと思った。
「譲が言ってたんだけどさ」
「譲の話は、でたらめだって、言っただろう?」
潤が、お気に入りのカップを持ったまま、立ち上がった。
潤の声は、怒気を含んで、微かに震えていた。
「僕も信じてないけど、気になるからさ」
「何にしたって、うちは異常だろ、って言いたいんだろう?」
「いや、そこまで言うつもりはないけど」
「言えよ、はっきり」
「いや、言うつもりないよ。詮索しないって約束したんだから」
潤の機嫌が悪いので、要望通り、はっきり言ってみた。
「恋人とか、夫に対するみたいだね、母上の潤に対する態度が」
潤は、真っ青になって、持っていた、華奢な空のカップを床に落とした。
僕は、譲の言葉を、直接言うことは控えて、だいぶ遠回しに言ったつもりなのに、潤にショックを与えてしまったことを悔やんだ。
僕は、床にしゃがんで、カップを拾おうとすると、カップは真っ二つに割れていた。
「ごめん。潤、僕が、失礼なことを言ったせいで……」
僕は座りこんだまま、立ちすくんだ潤を見上げた。
「僕のせいで、潤のお気に入りのカップ、割れてしまった。本当にごめん」
僕は、申し訳なくて、泣きたくなった。
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