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精霊の声
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潤は、落ちそうになる薔薇の挿頭を、精霊の声に耳をすませるような仕草で、耳にはさみ直した。
僕は、その女性的な仕草に、潤が女神かなにかであるかのような、不思議な感じを受け、幻惑された。
潤は僕の薔薇も直してくれながら、ご褒美のようにキスしてくれた。
僕の握られた拳は、完全に緩み、花びらのように五本の指が開かれて、潤の肩から下へすべり落ちた。
力の抜けた僕の身体を、潤の腕が、支えた。
吊り紐の緩んだ操り人形のように、緊張の糸が切れてくたっとなった僕を、潤の腕が支えきれず、しだいに崩れていきそうになるのを、大洗氏が手を貸して助け支えた。
「よくできたね」
大洗氏が、僕たちに、ねぎらいの言葉をかけた。
「潤のこと好き?」
すかさず潤が大洗氏に聞いた。
それを聞いて僕は、
もしかして、潤は、家では、自分のことを自分の名前で呼んでいるのかも。
と、ふと思った。
友人の僕が、遊びに来てるから、意識して、外で自称するように「俺」と言っていたのかも、と思った。
「ああ、好きだよ」
大洗氏が答えたので、潤は、ほっとしたような、満足そうな顔をした。
僕は、力が抜けて、ぐだぐだになっていたので、そのまま、地面に膝をついた。
大洗氏が、落ちそうになっていた、僕と潤の耳にはさんだ薔薇を抜きとった。
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