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「鈴木さん、手相にハマってるんだってさ。休憩時間に、ほら、タマキはフロアだから知らないだろうけど、見てくれて。結構当たるらしいぜ」
「手相って……、手相見る程度で触れた手を触ったって、言えるか?」
正直痛いところを突かれた。
「い、言えるね、間違いなく触れたね、この右手に。白くて綺麗な指が」
あれは間違いなく異性交遊だ。
「……童貞も、拗らせると大変だな」
「うるせーな、だいたいお前だってそうだろ」
17年もタマキの隣にいたんだ。こいつに一度たりとも彼女がいなかったのはもちろん知っている。
顔がいいのに彼女がいないのは、タマキが告白を断るからだ。
断る理由は”女に興味がないから”
このせいでタマキにはホモ疑惑が常につきまとっている。
でも、俺は分かる。タマキは男にだって興味がない。
高校時代に一度だけ下級生の男から告白されていたが、その時は”男に興味ないから”と断っていた。
浮いた話もなければ、好きなタイプとかそんな話も一切しない。
その割にはこうして、年齢=彼女いない歴の俺をバカにしてくるんだ。解せない。
「女からも、男からも告白断って。俺たちもう二十二だぜ、早い奴はもう結婚してもおかしくない。このまま一度も使わずに腐り果てそう」
どこが、とは言わないが。
「おあいにく様」
「他人事みたいに。お前のなんか腐り落ちればいいのに」
おおよそ二十二歳の人間とは思えない悪口だが、これも幼なじみ故と言えるだろうか。
「俺のは腐り落ちねぇから」
「ソープは無しだぜ、裏切り者」
「いや、物理的に」
そういって意味深な笑みを浮かべているが、タマキの下半身事情には正直興味がない。
「はぁ、どこからかポッと可愛い子でも湧いてこないかな。小柄で、黒髪で」
「目がおっきくて?」
「そう。唇は桜色。肌は白くて」
家庭的で、優しくて、なんて夢見すぎにもほどがあるがこんな子が現れたらどんなにいいだろう、というのは俺のかねてからの願望。
中学生の時からの妄想はこいつとの会話にも幾度と無く登場し、こいつすらも暗唱できるだろう。
「……その事なんだけどさ、これ見てくんね」
そういって、タマキはポケットに入れていた携帯を取り出し、操作をし始めた。
まさか、まさかとは思うが……
「この子なんだけどさ、どう?」
「!こ、これは」
携帯に表示された写真に写る美女はまごうことなく俺の理想だ。
白い壁をバックに、こちらを見るその女性は、黒く艶のある髪を肩まで伸ばし、綺麗そろえられた前髪の下には人形のような大きく輝く黒い眼。
鼻は小ぶりで、唇はまさに桜色。
俺の理想をまさに具現化したといっても過言ではない。
「お前、これどうしたんだよ。知り合いか?」
「まあ、なんていうか……」
「この子、俺に紹介してくれよ」
掴みかからんとばかりに、詰め寄る。
「落ち着けよ」
「落ち着いていられるかよ、将来の俺の嫁だぜ」
「…そんなに良いか」
「ドンぴしゃ」
写真に写る彼女に、目線は釘付けだ。
「なあ、この子の名前は?」
「…タマキ」
「タマキ?お前と同じじゃん。女の子にしては珍しいな」
タマキちゃんと、心の中で読んでみる。脳内ではすでにおれとタマキちゃんの新婚生活が開始されている。
「あのさ、涼。聞いてくれるか」
タマキの声が俺の妄想に割り込んでくる。
「?なに、どうした」
「オレさ」
そこでいったん切ると覚悟を決めたように言う。
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