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「あの……
主任…
……」
「何だ?
野良?」
「その…
先日…僕が契約を取った
古河物産なんですが…」
「あぁ
金井社長から
電話があって
お前のこと褒めてたよ
丁寧なサービスと熱意に
押されたって」
「あの…
突然で
申し訳ありませんが…
担当を変えてもらうことって……
出来ないでしょうか!」
「はぁ?
何?
急に…
どうした?」
「いや
その……」
「主任ー
相馬社長から
お電話です」
「すまん
後でいいか?
相馬社長は
特別な得意先なんだ」
「あっ………
いえ!
大丈夫です!!
忘れて下さい」
切羽詰まった
野良の顔が
気になったが
俺は
大事なクライアントとの
やり取りで
野良のことは
すっかり
忘れてしまっていた…………
俺たちは
節電器具を販売している
営業所での
使用電力量や
電気代が
人目で分かり
節電や電気代削減に
貢献できるよう
各会社で設定した
上限値を超えそうな
電気を
使用している場合
音や映像で
知らせるといった代物だ
配線や修理点検も
うちの会社が
一括で担当していて
電気工事士の
曲者オヤジ共との
やり取りも
一苦労だ…
技術があるだけに
オヤジ共の機嫌も取りつつ
クライアントの
希望も叶えなくてはいけない
営業を取る以外にも
板挟みという
辛い部署だ
俺が
入社して
初めて1人で
担当したクライアントは
九州一の
地鶏卵の生産を誇る
相馬鶏舎だった
契約にこじつけるまで
半年もかかった
大規模生産ラインを
動かし
何万匹もの
地鶏を育てる為の
温度管理には
莫大の電気代がかかる
それを抑えるためにも
俺たちの製品は必須だった
だが
昔気質で
石頭の
相馬社長にとって
俺らの製品は
詐欺みたいなモノに感じたらしい
最初は
製品の良さを信じてくれず
全然受け入れて貰えなかった
けど俺は
双方にプラスになると
信じて
絶対に
引かなかった
後で
「契約して良かったよ」と
安堵の笑みを浮かべる
クライアントの顔が
見たいからだ
何度もプランを練り直し
何度も足を運び
何度も売り込み
何度も頭を下げた
そうして
やっとの思いで
契約を掴んだ会社だった
契約した会社の中には
俺たち会社の
オペレーターに
24時間体制で
監視をオプションとして
契約している所もある
家畜など生き物を
扱っている会社
飲食店・病院が主だ
相馬鶏舎もその一つで
24時間
停電や火災
異常がないか監視していた
だが
その監視で
異常が発見され
電気工事士が点検した際に
誤って高圧線に
触れてしまい
ショートし
停電が起きた
電気工事士も感電
契約してから
三年目のアクシデントだった
今更
あの半年を
無駄には出来ない
契約の判を押してくれた
相馬社長の期待を
裏切ってはいけない
俺は必死だった
幸い
命に別状はなく
鶏も無事
一時間で復旧させた
俺ももちろん
現場へ飛び
状況の把握と共に
事故原因の説明
謝罪を行った
ネズミが配線を
噛み切ったことが
異常の原因だった
今回は
大規模な損失には
ならなかったが
鶏舎での
停電は死活問題だ
迅速な対応が出来たといっても
停電を起こしてしまったこと自体
とんでもない問題だ
もちろん
俺たち会社は
上限額の保証金を支払い
監視を特別に
無償で強化することで
事態は収まった
それだけで済んで
本当に救われた
契約の解消を
覚悟していたが
相馬社長は
今後も継続してくれると
言ってくれた
俺を
信頼してると
一度交わした契約は
簡単に白紙にはしないと
言ってくれた人なのだ
その社長が
なんと
俺に
孫娘との見合いを
薦めてきた
目から鱗
寝耳に水…
相馬社長は
俺のプライベートを知らない
仕事での
姿勢を買ってくれたそうだ
俺は
電話口で
どう
上手く立ち回り
お互いにプラスになるか
そればかり
考えていた
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