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可愛いは聞き飽きた
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「あの人、でかいなぁ……、あの人が教育係とか……絶対、ヤダな」
ボクは、ぶるっと身震いした。
ボク、宇野 智樹(うの ともき・26)は再就職でこの会社に入社した。
4月1日に入社して、社長の話とか先輩の話とかを延々聞かされた2日間。
眠くて、眠くて、死ぬかと思った……。
今日は3日目、4月3日。
会社に出勤すると、いつも通り、20名程度が入れる会議室に通される。
会議室の隅っこで3人が縮こまり、座っている。右隣に座っている2人はボクの同期。
普通に一日から働き始めたので、大卒の若い彼らと同期になった。若いといっても、たった3つしか違わないけど。
教育担当を割り振るからちょっと待っててね、と総務の佐藤 愛生(さとう あおい・32)さんが入り口付近で話をしている。愛生という名前だけど、男の人。
一緒に話しているのは、女性2人と大きな男の人。
「そうですか?」
隣から能天気な声が聞こえる。飯田 陽路花(いいだ ひろか・23)だ。
紺色のリクルートスーツに白いシャツ、真っ黒の黒髪を後ろで束ね、一見お堅い感じがするが、話をすると、なんだかちょっと惚けた感じがするコ。
「あの大きな男の人ですよね? なんか優しそうでいいじゃないですか」
なんかカッコいいし、とちょっとにやけている。
「オレ、男はヤダなぁ……どうせなら、あの可愛い人がいい」
飯田のさらに右隣から、山本 祢緒(やまもと ねお・22)の声が届く。
ありふれた苗字が嫌いだから下の名前で呼んでと言う袮緒。
グレーのスーツに青色のストライプネクタイ、慌てて染めた感じの少し長めの黒髪、長身で身体は少し細め。遊びなれているような軽い感じのコ。
祢緒は、にやにやと女性社員を見ている。
「ボク、大きな男の人、苦手なんだよね……」
その呟きに、飯田はほわんっとした笑顔をボクに向ける。
「ほんと、宇野さんって可愛いですよね」
少し、眉間に皺が寄ってしまう。
もう、可愛いは聞き飽きた。男なのに線は細いし、身長も160㎝にも満たない。
一応、就職するからと髪は少し短く切ったけど、そのせいで茶色の瞳が隠せない。ボクの目は色素が薄く、光に当たると琥珀のような色になる。そのせいで、年上の女の人から、可愛い可愛いと言われ続けできた。
どうせなら、カッコいいって言われたいよ……。
「宇野さん、オレのことも苦手ですもんねぇ」
袮緒は、ボクの方を見ずに、手元にあったシャープをくるくると回した。
そう、ボクは、大きな男の人が怖い……。
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