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怯えの訳
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考えても答えは出ない。
俺は固まっている足を動かし、階段を下りる。
踊り場の隅でしゃがみこんでいる宇野が居た。
乃木の告白を断るのに、疲れた?
近づく俺に、気が付いていないようだった。
「大丈夫か? 宇野ぉ」
立ち上がらせようと、宇野の手首を掴んだ。
途端に、宇野の息がおかしくなった。
息を吸いたいのに吸えないような、ヒュッヒュッと変な呼吸音が聞こえる。
宇野の手がぶるぶると震える感触が手を伝い、俺は慌てて手を放した。
少し離れ、正面にしゃがむ。
ゆるりと上がった宇野の顔は血の気が引いて真っ青になり、瞳に涙が溜まっている。
「わりぃ。驚かせた?」
恐る恐る宇野の表情を窺う。
「すいません、体質、なんで……男の人、だめ、なんです。さわら……れるの、だめ…」
……あぁ、だから……触られるのが怖くて、俺の前で怯えていたのか……?
あぁ、また俺のこと怖がっていた頃に逆戻りか……。
そう思うと謝罪の言葉が口をついて出た。
「ごめん、な」
「いえ……、すい、ません。唯一さんは悪く、ないんです……でも、ダメなんです」
ゆっくりと、宇野の呼吸が落ち着いてくる。
「平気だと思おうと思っても、身体が反応しちゃう……というか……」
俺のこと、怖がっている訳じゃないのか?
「また、俺のこと、怖くなった……?」
やっと俺に笑顔を向けてくれるようになったのに、また……。
俺の言葉に、宇野の瞳が揺れる。
「そんなこと、ない、です」
宇野の笑顔は少し引きつっていた。でも、一生懸命、俺は怖くないと思い込もうとしているような、そんな意識を感じた。
俺は、宇野を怯えさせたい訳じゃない。怖がらせたい訳じゃない。
でも、俺は、宇野にとって恐怖の対象でしかないのかもしれない。
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