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入社から半年過ぎた10月半ば。
ボクにも担当先が割り振られ、一人での行動が増えてきた。もう、唯一さんと一緒に客先に出ることもない。
「飯田わりぃ、ちょっとこれも一緒にやって」
大野田部長のところから戻ってきた唯一さんが、ボクの正面で作業している飯田に声を掛けた。
「えー。宇野さんに頼めばいいじゃないですかぁ?」
唯一さんは大野田部長から預かった注文書を飯田に渡す。
「ちょうど入力画面、開いてるんだから、ついでだ、ついで」
飯田さんはぶーぶー言いながらも、書類を受け取る。
あの時から、乃木の告白を断ったときから、唯一さんに避けられている気がする。
きっと、聞かれてたんだ……『ごめん、ボク、ゲイだから。女の子に興味ない』
冷静になって考えて、気持ち悪いって思われた……。
ボクが唯一さんをそういう対象で見ていると思われたのかもしれない。
そう、気持ち悪いよね……男が男を好きになるなんて……普通じゃない。
わかっているけど、ボクは男の人しか愛せない。欲情しない。
愛したところで、ボクはその人に触れることさえできないけど……。
「そうだ、今度、バスケ連れてってくださいよ」
これ、やりますから交換で、と飯田がにやっと笑う。
「ん?」
唯一さんは意味が分からないというように首を傾げた。
「仲間内でやってるんですよね? 社会人バスケ?」
「あぁ。でも、趣味の範囲でやってるだけだから、つまらんと思うぞ?」
「いいんです、いいんです。見たいだけだから」
にこにこと笑う飯田に、唯一さんはよくわからんと言わんばかりの顔をする。
「じゃぁ、明日行くか?」
「やった。行きます。じゃ、これやります」
そう言うと、にやけ顔で飯田はパソコンに視線を戻した。
唯一さんは首を傾げながら、自席に戻ってきた。
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