アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
酸っぱい苺。
-
木葉は左手首に付いている腕時計を何度も見ては笑みをこぼしていた。
バレーの時以外は基本的にずっとつけており、時間の確認というよりは赤葦からのプレゼントとして眺めている時間の方が多いのではないか。と、ふと頭をよぎり少し恥ずかしくなった。
そのとき、ちょうどチャイムが鳴り授業の終わりを告げられた。
「ヘイヘイヘーーイ!!!」
体育館へ向かうとさっそく雄叫びとスパイクによる爆発的な音と振動が伝わってくる。
春高予選に向けて木兎は燃え上がりまくっているのだ。
「木葉さん、お疲れ様です。」
「あぁ、赤葦もお疲れ。」
赤葦の挨拶にこちらも返す。
顔を見るだけで胸をギュッと掴まれる感覚。世の中の女子はこんな気持ちなのだろうか、などと思いを馳せた。
「木葉! 今日は自主練しねーか!? 予選もうすぐだし!」
「ちょっと木兎さ____」
「仕方ねーなー。いいよ、付き合ってやる!」
赤葦にいつまでも心配されるような身じゃ、ダメだと思った。
最後の最後なのだから、春高ではカッコイイところを見せたいじゃないか。
「アイツ……マジでもうちょっと……うぇぇ……」
普段より気合いの入っている木兎は自主練にも一層気合いが入っていたのだ。少し考えれば分かることなのに、なんて安直な考えで参加してしまったんだろう。
足元がおぼつかないまま部室を出ようとしていたところ
「木葉さん!」
赤葦が呼びかけながら走ってきた。
「お、おぉ、あかあし……」
「大丈夫ですか……? やりすぎて体調悪くなったりしたら本末転倒ですから、無理しないでくださいね……?」
「おう……ほんと、そうするわ……」
汗だくなのにまだまだ余裕そうな赤葦。コイツもなんだかんだ木兎と同類なのだと気づかされる。
「木葉さん。」
赤葦は木葉の左手を手に取り、ぎゅっと優しく握った。
「本当にずっとつけてくれてるんですね。」
「あ、当たり前じゃん……」
赤葦は木葉の耳元に近づいて囁く。
「そういうところが好きです。」
思わず後ろずさりをしてしまった。
「!?!?ちょ、い、いきなりなにすん……」
「顔真っ赤になってますよ?」
「う、うるさい!」
この一連ですっかり先ほどまでの疲れなど彼方へ飛んでしまい、嬉しいような恥ずかしいような、なんともいえない酸っぱい感情のまま帰路へ着いた。
お久しぶりです、これからちょこちょこ更新していきたいと思います。まだお読みになってくださっている方がいれば嬉しい限りです。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
64 / 73