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ガラスの靴さえも残らない。
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3月、卒業式。
名前を呼ばれ、起立すると「あぁ、本当に終わるのか」と妙な気持ちになった。
バレー部で良い仲間と巡り合え、色々な出来事を共有することができた。一方で後輩と付き合うなどという予想外の出来事も起きた。
それら全部ひっくるめて、最高の高校生活だったと思う。
◇◆◇◆◇◆
「ご卒業、おめでとうございます。木兎さん。」
「あかーしー!!これからも毎日トスくれぇぇ!!」
「あの、毎日は無理です。」
「最後くらいノッてくれよ!!」
木兎と赤葦は最後までいつもと同じ調子だった。もしかすると赤葦がそうすることで「いつも」を保とうとしたのかもしれない。
「木兎は死ぬまであんなかんじなんだろうな〜。」
「ワカル。」
「ずっと赤葦赤葦って言ってそう。」
「全くです。」
いつものメンバーで木兎を眺め、そう言った。
この光景を見られなくなるのだろうと思うと、なんだか寂しく感じた。
「木葉さん。」
「ん?」
どうやら木兎は別の友人のところへ行ったみたいで解放されたらしく、こちらへ駆け寄ってきた。
「ご卒業おめでとうございます。」
「そんなかしこまらなくていーって。」
赤葦の律儀さに思わず笑ってしまった。
「ここで話すのもなんだから、教室行かね?」
「いいですよ。」
向かった先は木葉のクラスである3年3組。木葉は中の様子を伺いつつ、ゆっくりとドアを開けた。
「お、ラッキー。みんないないっぽい!……ここが俺の席な〜。」
「ベストポジションじゃないスか。」
自慢げに後ろの窓際の席であることを教えると
木葉が座り、突っ伏した。
「赤葦も卒業おめでとう。」
「……どういうことですか?」
「……木兎のお世話から。」
「たしかに、お世話は卒業しましたね。……でも俺は良かったですよ、スターと一緒にいられて。」
「スターねぇ……俺は最後、ただのエースになれって言ったなぁ。」
赤葦はふっと笑った。
「木葉さん、この高校で、このバレー部で、俺はすごくいい経験をしたと思います。おそらく、人生の全盛期になるかもしれません。けど、それももう終わりです。」
次の瞬間、すべての感覚受容器が拒否するような言葉が教室に響き渡った。
「俺たちも終わりにしましょう。」
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