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抜け出そうか。
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文化祭1日目が終わり、家に帰ると真っ先にベッドへ飛び込んだ。枕に顔を埋め込んで疲れを吐き出すように大きく息を吐いた。
あー、制服がシワになるな、早く脱がねーと…そう思うが体が疲労でなかなか言うことを聞かない。
そんなとき、ズボンの後ろポケットに入れていたスマホが微振動した。
誰からのメッセージだろうと画面を開くとラインが来ていた。開くと送信者は赤葦で、「明日空いてたら一緒に文化祭回りませんか。」という内容だった。
もちろん返事はイエスだ。イエスなのだが…
明日も女装する予定になってしまっている。くそっ、あんな出し物になったせいで…!
「あーすまん、明日も担当でさ…明後日なら空いてるんだけど…」
「予感はしてましたけど、やっぱりですか。すみません、明後日は俺が空いてなくて…。わがまま言うことになるんですが、せめて30分は貰えませんか?」
30分…か。客寄せしてくる、と言えば抜け出せないこともない。実際今日、少し予想を上回る客が来たらしいし、実績はある(はず)。
もう今年最後の文化祭なんだ、赤葦と回らなかったら絶対後悔する。
「了解。30分なら大丈夫だ。11時半から12時でいいか?」
「すみません、ありがとうございます。」
約束し終えると、胸が高鳴った。恋人のために無理にでも時間を作るのが全く苦じゃない。むしろ嬉しいくらいだ。
木葉はスマホを握りしめ、喜びで笑みがこぼれた。
そして2日目。またばっちりメイクを施し、接客に励む。
何故11時半からにしたかというと理由は単純。うちの出し物はあくまで喫茶店で、食べられるのは簡単なお菓子くらい。つまり、昼食を食べるであろう時間の前後なら客足も減るだろうという推測だ。
そしてタイミングを見計らい、近くにいるクラスメイトに客寄せに行ってくると言うと即OKだった。手ぶらではおかしいので10枚ほどビラを持って赤葦と待ち合わせしているところへ向かった。
「木葉さん、大丈夫でした?」
「おー余裕よ!」
「すみません、無理に言って…」
「だーかーら、謝んなくていいっつーの!後輩…恋人のために一肌脱ぐよ。…じゃ、行こうか!」
30分という短い時間で色々回った。木兎たちのクラスも覗いてひっそり侵入してやった。そこで2〜3枚ビラを配ると人の客を取るなと怒られた。(ちょっとした仕返しだざまあみろ)
小腹が空いてきた頃、その辺で売っていたたこ焼きを買って人通りのない校舎裏へ2人で駆け込んだ。
「はい、赤葦あーん。」
右手でたこ焼きを刺した爪楊枝を持って赤葦の口へ近づける。実はやってみたかったことでもあるのだ。
赤葦は恥ずかしがりもせず、いつも通りのポーカーフェイスですんなり食べた。
「赤葦ほんっと恥ずかしがらねえよな…」
「いや恥ずかしいとかよりせっかく木葉さんがこういうことしてくれてるから食べねばっていう気持ちが大きいので。っていうか木葉さんが恥ずかしがり屋なだけなんです。」
「俺恥ずかしがりじゃねえよ!普通だ普通!」
「はい、あーん。ほら木葉さん。」
別に口で受け取るだけ、ただそれだけ…なのに恥ずかしくなってきてしまって、面倒くさい自分にムカついた。
「どうしたんですか。恥ずかしくなったんですか?」
間が開けば開くほどやりづらくなってくる。でもやらなければ負けなので思い切ってやった。
「…食べたぞ。」
「速攻で来ないあたりやっぱり恥ずかしかったんじゃないですか。」
「食べたからノーカンだろ!」
「はいはい、もう普通に食べましょう。」
食べ終わる頃にはあと10分しか猶予は残されていなかった。短かったけど楽しかったな、最後の文化祭。本当は丸一日赤葦と回りたかったけど。
「木葉さん。」と呼ばれ、横を振り向くと赤葦がキスをしてきた。と言っても唇をくっつけただけの軽いキス。
「…ん?なに、どしたの。」
「文化祭って恋人がイチャつくイベントの一つでしょう。だから、キスの1つや2つくらいどのカップルでもやってるんですから俺らも…っていうより俺がやりたかっただけですけど。」
「口実と本音を同時に言う奴初めて見たわ。」
木葉が笑いながら言うと、赤葦もつられてふっと笑った。こうしている時間が、すごく楽しい。ずっと続けばいいのに。
そんな気持ちでいると、不意に後ろから声がした。
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