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その後 ~朝霞編~ 36
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「いいんですか?! ありがとうございます!!」
颯くんはそういって、満面の笑みで頭を下げてきた。
・・・正直いって、僕は本当にその判断でよかったのか分からない。
普通なら、この子のためにも家に帰すのがいいはずなんだ。
けど、見た目や喋り方から真面目な子なんだろうと思ったし、それにこのまま連絡を入れてしまったら、彼はきっと悲しむんだろうと思うと、どうしてもできなかった。
僕は・・・
きっとこれから、彼に邪(よこしま)な想いを抱き始めてしまう。
そんな予感がした。
でも。
それでも僕は、一時でも彼の負担を減らしてあげられたら、と話を聞くことにした。
彼は、ゆっくりと口を開いた。
「俺、見てわかると思うんですけけど、母さんがフランス人で、父さんが日本人の、いわゆるハーフなんです。
それで色素はフランス、顔立ちは日本で不良みたいな見た目になってて。
みんな、俺がお洒落でやってると思って、面白がってからかってきてたんです。
まあ、そこまではよかったんですけど、そこからドンドンエスカレートしちゃって・・・。
ふざけて階段から押されちゃってアザがたくさんできちゃって。
普段だったら両親は海外だし、ばれることもないんですけど、今日帰ってきてて。
こんな傷、見せられないな、って友達の家に泊まるって嘘ついて出てきたんです」
・・・開いた口が、ふさがらなかった。
確かに、彼は見事な金髪だし、目も青だ。
でも、むしろそれが彼の端整な容姿を余計に引き立てているというか・・・
しかも、そんなくだらいない事だけでいじめをするとか、考えられない。
「両親に、いじめられてることは言わないの?」
でも、それは黙っている颯くんにも問題があると思うんだ。
だから、僕はそうやって颯君に尋ねた。
でも彼の返事は、僕には到底、考え付かないものだった。
「両親の・・・母さんの、悲しい顔を見たくないんです。
俺の母親、フランスの有名な良家の一人娘で。
父さんと駆け落ちして、日本に来たんです。
だから今まで凄く大変で。
やっと落ち着いてきて、幸せになれたのに、自分の血が混ざってるせいで・・・。
なんて、思わせたくないんです。
俺は、俺がいじめられるより、母さんが悲しんで負い目を感じる方が辛いから・・・」
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