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その後 ~朝霞編~ 42
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「朝霞先生~」
院内を歩いている最中、後ろから声をかけられた。
何かと思って振り返ってみれば、大学時代の友人であり、同じ精神科医の徳正(のりまさ)がいた。
ちなみに、普段は下の名前を呼び捨てで呼び合うのだけど、仕事中はお互い先生呼びだ(それでも、下の名前で先生呼びだけど)。
「徳正先生、どうかしました?」
にこにこといい笑顔で近づいてくるところをみると、なにか良からぬことを考えているのだろう。
・・・勘弁してほしい・・・
「朝霞先生、お願いがあるんですけど」
近づいてきてそうそう何を言ってるんだか、こいつは。
僕はそう思いつつ近くの待合室を気にして、下手なことは言えなかった。
「お願い、ですか」
まあ、言い方に若干のトゲがあることくらいは多めに見て欲しいところかな。
しかし、そんな僕の考えを知ってのことなのだろう。
徳正は笑顔で話を続ける。
「ええ。次の土曜日、先生非番でしたよね? その日、どうしても休みたいんですよ。なので、もともと俺の休みだった明日とその日、俺と当番代わっていただけません?」
「・・・」
引きつった笑顔って、こういうことを言うのだろうか。
口角がヒクついているように思えてならないのだけど・・・
というか、徳正、それってただ単にミカちゃん(徳正の彼女)とデートしに行きたいだけでは?
「・・・理由を教えていただいても?」
そして僕は、少し意地悪に質問をしてみた。
週末と平日の仕事量が明らかに違うのは徳正も知っているはずだし、この位の意地悪しても撥は当たらないでしょう。
すると、元から予測済みだったのかも知れない。
徳正はニヤり、と笑うと
「恋人から婚約者に昇格してこようと思いまして」
と言ってきた。
そろそろ結婚してもおかしくはないな、と思っていたから別に驚きはしないけど。
でも、いきなりだなあ・・・
まあ、これだけは言ってあげる。
「おめでとう」
と。
そして、この言葉の意味を察したのか、徳正は
「ありがとな、二重の意味で」
と、去っていった。
その場に一人、残された僕は
「まったく。いきなり明日休みになったっていわれても・・・」
そういって苦笑したのだった。
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