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宝(兄さん)探し
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留学して一年経っても、父からの連絡に兄さんの話はなかった。
聞いてもまだ目覚めてないと言うばかり。我慢できなくなって帰ろうかと思った矢先、母が日本からやってきた。
そして暫く一緒に住むと言い出したんだ。
母は相変わらず可笑しくて、正直煩わしくてしょうがなかったけれど、放っておくと余計に面倒だったので適当に相手をせざるを得なかった。そしてなかなか日本に帰ることが出来ないまま、数年が経ってしまう。
やっと帰れたのは大学進学の時だった。日本の大学に行きたいと言うと、父は渋々ながら了承した。
やっも兄さんに会えると喜んだけれど、日本に帰ると兄さんは家にはいなかった。入院していた病院にもいない。どこにも、兄さんがいない。
父に聞いても何も教えてくれないし、母なんて話にならない。自分で捜すにしても、父が邪魔をする。今まで自由に使っていた口座を使えなくされては、捜すことが出来ない。僕一人で出来る事なんて、たかがしれている。
ならば僕がやることは一つだ。自由に使える金を作ること。
だから大学で経営学を学びながら、起業した。目的は言わなかったけど、資金は母が喜んで提供してくれた。
それが軌道に乗るまで数年、兄さんを捜しながら仕事と勉強をこなし、漸く足取りを掴んだ。兄さんは、父の会社の末端にいた。その時住んでいたのは、隣りの県。思ったよりも近くにいた。
嬉しくて、直ぐに会いに行った。
職場を訪れると、兄さんと思われる人が知らない男と笑い合っているのを見つけた。あの優しげな笑顔は、間違いない。兄さんだ。
「兄さんっ」
「……え?…あ……ぁ…」
駆け寄る僕に気付いた兄さんの顔が、紙のように真っ白になる。そして弾かれたように逃げ出してしまった。
逃げられたショックでその場に立ち尽くしてしまったけど、驚かしてしまったかなと反省し、翌日出直せば良いとその場を後にした。
が、兄さんは翌日には退社して、引っ越してしまっていた。きっと父の仕業だ。
じゃなければ、こんなに早く出来るはずがない。
腹が立ったけど、言っても無駄だ。また捜せば良い。一度見付けたんだから、次も必ず見付かる。
そして二度目は一年後、父の知り合いの会社で見付けた。けれど、行ったときには解雇されていた。
忌々しい父だ。どこまでも邪魔をする。
三度目は難しかった。父の会社にも知り合いの会社にも、兄さんを見付けられなかった。
「あの子は、私の手から離れた。どこにいるのか私にもわからない。……いい加減、諦めたらどうだ」
「…知らないなら、用はないよ」
漸く見付けたのは、それから二年後。
父は嘘をついていた。
父の所有する携帯の一つに、愛人の名前で登録されていたのは、兄さんの連絡先だった。それに気付いてから、父を監視すること一年と少し。
長かったけれど、やっと報われた。
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