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優しい時間
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無意識に呟いてしまった言葉に、ドキッとする。今、何を言ってしまった?
慌てて優人を見たが、静かな寝息を立てていた。
そのことに安心して、優人をどうしようか考える。
張って引き摺って行くか人を呼んで助けて貰うか、迷っていると優しい音が鼓膜を震わせた。
「ユタカ、ここにいたのか」
優人の髪を撫でながら振り返ると、アンバーさんを伴ったカティアスさんが、こちらに歩いてくるところだった。
隣町から帰ってきたようだ。
「部屋にいないから、心配したぞ」
「ぁ…すみません。えと、お帰りなさい」
「…あぁ、ただいま」
柔らかい笑顔で傍に来ると、後ろからお腹に腕を回そうとして首を傾げた。
そしてすやすやと眠る優人にき気付くと、眉を寄せる。
「む?何だ、それは。何故、抱き合っているんだ」
「これは……えっと、仲直り、していたんです」
「仲直り?そうか…まぁ、良い。アンバー」
「はいはいーっと」
仲直り、なんてちょっと照れくさいな。喧嘩…ではないけれど、弟から逃げ回る兄なんて、情けないと思われたかもしれない。
けれどカティアスさんはそれ以上聞かず、アンバーさんに優人を運ぶように言った。そろそろ冷えてきていたから、助かる。
起きる気配のない優人を抱き上げて、アンバーさんは去って行った。その動作は全然危なげなくて驚いた。
細そうに見えるけど、意外と筋肉があるのかな。羨ましい。
二人が去るのを見届けていると、カティアスさんが俺の手を取り、無言で歩き出した。
「…カティアス、ぉ、うじ?」
横顔を見上げると不機嫌な気がする。
何か…してしまっただろうか。
…もし何かしてしまったのなら、言って貰えればもう二度としないし、謝る。だから、もう少し傍に一緒にいさせて欲しい。
こんな幸せな気持ちになるのは、凄く久しぶりなんだ。
不安な気持ちのままカティアスさんに手を引かれ部屋に着くと、既に光石が光を放ち、暖炉の大きな火炎石は叩かれ暖かくなっていた。
カティアスさんは暖炉の前に敷かれている毛足の長い絨毯の上に俺を座らせ、自分は寝っ転がる。そして膝に頭を乗せると、満足そうに息を吐いた。
「ユタカの…膝枕」
それが嬉しいのかは微妙だと思うけれど、カティアスさんがそうしたいのなら、喜んで膝を提供したいと思う。こんな柔らかくも何ともない膝で良ければ、いくらでも。
「ユタカ、撫でてくれ」
機嫌が直ってきたカティアスさんは、腰に腕を回し頭を押し付けてくる。
それを見ていたら、アンバーさんの言っていたことを思い出した。
「うちの王子はねー、七人兄弟姉妹の下から二番目だから、甘ったれなんですよー。だからユタさん、これ以上甘やかさないで下さいねー」
優人といいカティアスさんといい、弟というのは兄のツボを心得ているものなのだろうか。こんな可愛いお願い、断れるわけがない。
言われたとおり、その金色の髪を撫でてみると、サラサラとして触り心地が良かった。カティアスさんも気持ち良さそうに微笑む。
こんな可愛い王子様なら、女性が放っておかないだろうな。
「カティアス、ぉ、王子…」
「それ、気になっていたのだが」
「え?」
「いつも王子のところで、つっかかるだろう?言いにくいのか?」
じっと濃い緑色の瞳に見上げられ、言葉に詰まる。
その通りなのだ。
周りの人たちに合わせて、カティアスさんを呼ぶときは王子と付けるようにしているのだけど、発音が難しかった。
でも、それを正直に言って良いものか。
「ユタカ」
「……すみません、実は…」
でもその瞳に見つめられると、嘘はつけない。
正直に話すと、カティアスさんは小さく笑った。
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