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オレの気持ちが軋むだけ
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会社の忘年会。
オレは宇野さんの横に座った。
飯田が唯一さんの隣に座り、オレは自然と宇野さんの隣に座ることができた。
「仕事、慣れました? オレ、まだなんか……」
話かけながら、宇野さんを見る。
宇野さんは、正面で内緒話をしている2人を見ていた。
「聞いてます?」
オレの声に、はっとしたようにオレを見る。
今、やっと、オレが居ることに気が付いたかのように。
「あ、……ごめん」
その後、オレは一生懸命話をした。
宇野さんは、相槌は打ってくれる。
でも、宇野さんの耳にはオレの声は届いていなかった。
2次会に行くって言うから、もちろんオレも行った。
少しでも見ていたかった。話を聞いてもらえなくても、話したかった。
でも、結局、オレは飯田に捕まる。
宇野さんと話したかったのに、飯田が絡みつく。
飯田の話なんて聞いてない。耳になんて入ってない。
宇野さんが誰も居ないボックス席に移動した。
オレ、宇野さんと話したい。
「待てっ」
カウンターの席立とうとしたとき、まるで、犬でも呼び止めるかのようなニュアンスで、飯田がオレの腕を掴んだ。
オレはそのまま、止まる。飯田に視線を向けると、にこっと笑う。
酔っぱらっているのかな……。
「なぁに?」
オレはそんなに切羽詰ってない。オレは余裕のある男。
そんな風体を装って、優しく笑顔で飯田に問う。
「いいからさ。私と飲もうよ、ね?」
にこにことオレを席に留める。
あ……。
唯一さんが宇野さんの前に座っちゃった。
もう、オレ、行けない。
あの2人の間には入っていけない。
好きな人の傍に行きたい。
でも、オレの好きな人は、オレの邪魔な人に懐いてる。
唯一さんは宇野さんを笑顔に出来るけど、オレは宇野さんを笑顔には出来ない。
宇野さんの笑顔は唯一さんを見ている。オレには向けられない。
きっと、そんな場所に行ったって、オレの気持ちが軋むだけ。
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