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「――人間の格好だと、こういうことがしやすくていいな」
接吻、というよりも、すでに捕食の前段階であるかのような、濃厚で荒々しい、むさぼるような口づけを三日月に贈りながら、暁丸はにんまりとそうつぶやいた。
「そうだね、確かに、人間の姿をしていたほうが、こういうことはやりやすい」
穏やかに微笑み、桃色の舌をチロチロとひらめかせながら、三日月は愛しげにそうこたえた。
「白くて、すべすべ」
三日月の襟元をくつろげながら、暁丸はうれしそうに三日月の白絹のような肌をなでまわし、さらにはなめまわした。
「すっげえ、綺麗」
「ありがとう、暁丸」
三日月は、本当にうれしそうに、同時にひどく面映ゆげに微笑んだ。
「君の赤銅色の肌も、緋色の髪も、金色の瞳も、とてもとても美しいと、私はいつも思っているよ。もちろん、竜の姿の時の、緋色の鱗も鋭いかぎづめも大好きだ。……ああ……」
三日月の緋色の瞳が、暁丸の金色の瞳をうっとりと見つめた。
「この、金の瞳だけは――いつでも、変わらない――」
「おまえの赤い目も、いつでもすっげえ赤いな」
暁丸は楽しげにそう言いながら、三日月の紅い瞳をベロリとなめた。
「血の色がそのまま透けているんだ。私の体には、色がないから」
「色がないのに、血は赤いのか?」
「え? ああ――そう言われてみると、確かに不思議だね」
不思議そうに首をかしげる暁丸の問いに、三日月もまた、不思議そうに、同時にひどく真摯な様子で首をかしげた。
「あ」
暁丸は、三日月のはだけられた胸元からのぞく肌を見て、うれしそうな声をあげた。
「こっちも、赤くなってきた」
「それは、まあ……こういうことをしていれば、さすがにね……」
「ひゃっこい」
暁丸は、三日月の打掛をガバと勢いよくはだけ、自らの手でむき出しにした三日月のなめらかな胸に頬ずりしながら楽しげに言った。
「冷たいかい? ごめんよ、なにしろ私は蛇だからね」
「は? なに言ってんだ、逆だ、ばーか! ひゃっこくて気持ちいいって、俺は今そう言おうと思ったの!」
「そうかい? それならよかった」
三日月は、本当にうれしそうにニコニコと笑った。
「……俺、あっちくねえ?」
暁丸は、三日月の胸に頬ずりしながら、幾分心配そうにそう問いかけた。
「とても熱くて、とても気持ちがいいよ」
三日月は、暁丸の頭を撫でながら、優しいやわらかな声でそうこたえた。
「そっか。よかった」
暁丸はうれしそうににっかり笑いながら、ジュウ、と三日月の胸に吸いついた。
「あ、やべ」
暁丸はあわてたように、うっすらと血で塗れた唇を三日月の胸から離した。
「ごめん、血、出た。おまえ……すげえ、やわいんだな……」
「いいよ、別に。これくらい平気だから」
三日月はあっさりとそう言い放ち、暁丸の唇についた自分の血をペロリとなめとった。
「……舌」
「え?」
「おまえの、舌」
暁丸の金の瞳が、ドロリと熱っぽい光を放った。
「すげえ、やわい……」
「あげるよ」
三日月は一瞬のためらいもなく、ベロリと舌を突き出しながら、暁丸に妖艶な笑みを送った。
「私はこれでも蛇神だから、舌の一枚や二枚、食いちぎられたところでどうにでもなる。君がそんなに気に入ったのなら、この舌、あげる。好きにしていいよ」
「あ……」
暁丸は、吸い込まれるように三日月の舌を食んだ。
「ああ……どうしよ……」
血塗れの唇を三日月の口から、いや、その桃色の舌から引きはがしながら、暁丸は恍惚と当惑とを重ねあわせた声でつぶやいた。
「俺、おまえに……すげえ、ひでえこと、しちまうかもしんない……」
「別にかまわないよ」
三日月は鷹揚な、それと同時に淫蕩な笑みを浮かべ、暁丸の頭をその白くなめらかな、今は朱鷺色に上気した胸に抱いた。
「だって私は蛇だから。これでも一応、蛇神だから。だから、死にさえしなければあとはどうにでもなる。蛇というものはね、君、大変に――しぶといものだという、定評があるのだよ――?」
「――畜生」
暁丸は、低くうめいた。
「後で泣くなよ?」
「いやいや、暁丸、そこは君、私を泣かせてくれるくらいじゃないと」
三日月は、シレッとすました顔でそう言った。
「――食われてえのか?」
暁丸は獰猛にそうつぶやきながら、ギリ、と三日月をにらみ据えた。
「ああ、もちろんだ」
三日月は、寸毫も迷わず深々とうなずいた。
「私は君に、食われてしまいたいんだよ」
「……死んだら承知しねえぞ」
「ああ、私だって、そんなもったいないことをするつもりはない」
「……優しく、してやりたかったのに」
「ばかだな」
三日月は愛しげに微笑みながら、そっと暁丸の頭を、そしてそのなめらかで張りのある頬を撫でた。
「君はもう、こんなにも優しいのに、この上さらに優しくしてもらったりしたら、私はほんとに、骨までとろけてしまうよ……」
「もう、とろけてんじゃねえの?」
暁丸は、真顔でそう問いかけた。
「だって――こんな、やわくて、しなしなして、すべすべして、トロトロで――」
「――熱い」
暁丸に全身をまさぐられ、赤い食み跡を体中に刻まれながら、三日月は陶然とつぶやいた。
「君は、とても――とても熱いね、暁丸――」
幼さを残す紅い竜から返るこたえは、言葉ではなく、炎のような吐息だった。
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