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過去から一歩
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「お母さんのことは、大丈夫よ。………私が侑紀の分までお母さんの期待に応えるから。だから侑紀は早く元気になって。」
あのときの侑菜の言葉とその表情はいつまでも忘れることはない。
その後侑紀は父の計らいで田舎の泰蔵と仁美の元へ預けられ、広い田舎でのびのびと暮らし心の傷は癒えていった。
侑花のことをあまりよく思っていなかった祖父母は侑紀が預けられた本当の理由を聞くとずっとここにいていいと言ってくれた。
学校で友達もたくさんできた。
笑うようになったし元来の天真爛漫な性格に
も戻った。
和史や侑菜からはよく連絡が来たが、侑花からは一度も来なかった。
そのこと以外はすべてがもとに戻ってようにみえた。
しかし、あの母の影響か女性恐怖症になってしまっていた。
家族以外の女性がてんでだめなのだ。
今では大体は平気なのだが自分と、年の近い女子はまだ恐怖を覚えるときがあった。
その事を除けば今の侑紀があるのは侑菜のお陰なのだ。
あのまま、侑花の元にいたら侑紀壊れていただろう。
しかし侑紀が救われた代償に、侑菜は自分の未来を自分で選ぶことができなくなってしまった。
あのときの、今の、未来の侑菜の犠牲の上に今の侑紀がいる。
今度は侑紀が侑菜を救う番だ。
まだ自分には無理だと思うけれど。
「姉ちゃん。俺、やってみるよ。」
過去に囚われ続けないで一歩勇気を持って踏み出してみよう。
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