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来宮陣という人 side.諒
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『なあ、恭一郎?』
陣さんーいや、清水警部がこちらを見上げながら艶然と微笑んでくる。
背筋がゾッとした。
陣さんと共演するたびにこの感覚を味合わされる。
来宮陣は、紛れもなく天才だ。
七変化するかのように全く違う人間になる。
俺は今回の現場で二人の天才に囲まれている。
一人は陣さん。
もう一人は、侑紀。
俺はそのなかでも見劣りしない演技をしなければならない。
ちょっとしたプレッシャーを感じつつ。
負ける気なんて更々ない。
『なんでしょうか、清水警部。』
3分ほどのシーンが撮り終わり一旦休憩に入る。
その場にしゃがみ込む陣さんの元へマネージャーの高良さんが駆け寄り薄くて細い体を支えて椅子へと座らせる。
天才故に1度の演技で莫大な集中力と体力をもっていかれるらしい。
今は高良さんが甲斐甲斐しく陣さんの、応急処置に当たっている。
メイクとヘアセットを崩さないように、衣装を汚さないように陣さんの体をクールダウンしていく。
本当にこの2人は二人三脚でここまで歩んできている。
「陣、大丈夫か?」
「颯眞さん、ありがとう。もう大丈夫だよ…。」
弱々しく微笑を浮かべる姿は先ほどまで蠱惑的に、艶やかに微笑んでいた人物とは同じ人物とは思えない。
周りの人々もこの表情を見て、態度を見て陣さんのために何かしてあげたいという気持ちにさせられるのだ。
やはり、この人は天才だ。
演技の面でも。
人を惹きつける面でも。
そんな、俺も後輩として、陣さんを尊敬しているのだった。
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