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さすがね side.侑菜
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「おばあちゃん、おじいちゃん。おはよう。」
私は、田舎の祖父母の家であれからお世話になっている。
「おはよう、侑菜。昨日はよく寝れた?」
「うん。ありがとう。」
ここは暖かくて優しい。
素の私でいられる。
今まで可愛がって育ててきた侑紀を自分の身代わりにした私を、2人は何もなかったかのように可愛がってくれる。
本当に、いい人たち。
こんないい環境で、侑紀が育ってよかった。
侑紀が私のようにならなかったのはこの人たちのおかげなのね。
「そうだ、侑菜。高槻さんからDVDが届いてたよ。」
高槻さんが『碧の涙』のDVDを定期的に送ってくれる。
「ありがとう。後でみんなで観よう?」
「そうね。楽しみだわぁ。」
大体、朝食後にDVDを祖父母とともに観ることになっている。
祖父母は本当に侑紀を心配していたので、侑紀のDVDの中の姿でも元気なのを見て喜んでいた。
朝食を食べ終わり、三人とも心なしかウキウキとテレビに向かう。
テレビの中では、侑紀が記憶を取り戻す演技をしている。
苦しみもがいている姿はこちらも苦しくなるほどだ。
ーーさすがね。侑紀。
私は、侑紀の演技が、歌が大好きだった。
観るものを共感させ、聴く者の心に寄り添う。
母に強要されて始めた稽古も侑紀がいたから頑張れた。
本当に自慢の、大好きな、自分の片割れ。
彼には幸せになってほしい。
だから、今回私は侑紀と入れ替わった。
あの子が、本当の幸せを掴めますように。
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