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おすそ分け side.翠
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今日は朝から撮影まで事務所で密かに侑紀さんの送別会を開くことになっている。
2日後の撮影が終わったら侑紀さんはyu-ki*から榊原侑紀に戻る。
ほんのわずかな時間だが、彼に関わった人たちで侑紀さんの送別会を開こうと美月さんが言い出した。
参加者は僕と美月さん、千尋さんと橘さん、そしてもちろん侑紀さんだ。
千尋さんが侑紀さんを迎えに行っている間に応接室を僕と美月さんと橘さんで飾り付ける。
「翠、これを入り口に飾ってきてちょうだい。」
「はい、美月さん。」
美月さんに渡された垂れ幕を入り口を入ってすぐのところにあるホワイトボードに貼り付ける。
これは昨日の夜千尋さんと二人で作ったものだ。
完成したものを見てなぜか美月さんと橘さんは苦笑いしていた。
確かに少し独創的かもしれないけど侑紀さんの好きな青を基調としていて素敵なものができたと自負している。
ホワイトボードにそれを貼り付け、少し下がって出来を確認する。
「美月さん、終わりました。」
「ありがとう。」
ちゅっと軽く音を立てて美月さんがおでこにキスをしてくる。
少しくすぐったくて肩をすくめてしまう。
その時わざとらしい大きな咳払いが聞こえた。
その音の元は言わずもがな橘さんだ。
「あら、無粋ねぇ。ヤボ男。」
「はいはい。ヤボ男でいいですから、俺の目の前でいちゃつかないでくださいよ。」
「あら、こんなのただの挨拶よ。」
「ここは日本ですよー。…千尋ぉ、早く帰ってきてくれ…。」
この二人はいつもこんな感じだけど、仲が悪いわけではない…と思う。
二人が言い合っているのはいつも通りなので放っておいて部屋の真ん中に花瓶を置いてそこに花を生け始める。
この花は友人の経営している花屋から仕入れさせて貰った。
こういう時自分の前職が活かされてると感じる。
花を活けながら小さい声でつぶやく。
「侑紀さん、喜んでくれるといいな…。」
「そうね。」
誰にも聞こえないと思っていたのに美月さんに聞こえていたみたいで、こちらに微笑みかけてくれる。
そんな美月さんに胸があったかくなって幸せな気分になった。
この幸せを侑紀さんにもおすそ分けしたいなんて、僕のエゴだろうか…?
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