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両親と事故にあったのは、恐ろしいことにもう半年ほど前のことになった。
トラックと普通自動車が正面衝突した事故、それは俺の両親を奪ったけれど、俺、瀧野小虎(たきのことら)は左足と左腕を骨折しただけで奇跡的に生還した。
そりゃ憎かった、「来年には高校生になるね」なんて未来の話をしていたところに居眠り運転で反対車線に突っ込んできたトラック。最後に見た両親は俺のことをいっぱい話してくれて笑っていた。
病院で目を覚まして、看護師さんから事故のことを聞いて…二日間ずっと泣いて泣いて泣いた。お葬式ももうすぐおこなわれると聞いたけれど、その時の俺は動くことが出来なかったから最後のお別れも出来なかった。
俺の祖母と祖父は父方母方ともに他界してしまっていた。ちなみに両家ともなかなかの資産家だったらしい、俺の家は至って普通の家族だったんだけどな。
なんでも両家の遺産は長男の父さんと長女の母さんにそこそこ流れてきていたらしい、おかげで俺に残された遺産とやらはなんでも億を余裕で超えているとかなんとか。
だから入院中は「うちへこないか?」と見かけたこともない親戚に良く言われたがすべて断った。何が楽しくて金目当ての初対面の親戚の所へ行かなくてはならないのか、と。我ながらドラマのような出来事に巻き込まれたものだな…なんてこの時は悲観していた。
そんな俺が選んだのは母さんの弟で俺の叔父にあたる加賀美侑(かがみゆう)叔父さん。
母さんもそこそこの美人さんだったけれど、侑叔父さんはテレビに出てていいレベル。30歳過ぎているのに格好良さは年々磨きかかっている。185cm以上はある高身長に綺麗な二重の瞳、黒の髪をオールバックさせてスーツを身に纏えばすれ違う人みんな振り返った。
ここ数年は仕事で海外へ行っていたけれど、事故があったと聞いてすぐに帰ってきてくれた。そして俺に会うなり泣いて「嫁も子供もいない俺で良かったら、頼っていいから」と言ってくれたのだ。
侑叔父さんは小さいころに遊んでもらったり誕生日にはかかさずプレゼントを送ってくれたりと俺にとって兄のような存在。
しかもお金に困っている人じゃなかった、母さんが継がなかった会社を継いだ侑叔父さんは若くして代表取締役なんていう恐ろしい地位についている。だから「遺産をくれ」なんて言われなくて済むと思った。
腕と足に怪我の痕が残ったけれど全快して退院、その後始まった海外から帰ってきた侑叔父さんと二人での生活は行き当たりばったりだった。
なにせ子育てどころか恋人すらいなかった侑叔父さんが中学三年生の俺を引き取った、最初は何して遊べばいいのだ?とか俺は何をすればいい?と聞いてきたくらい。だから答えた、どっしり構えてくれていれば俺は俺で何とかするよ、と。
とはいえ構いたがりな侑叔父さんは週末は必ずオフを取り、俺と買い物行ったり映画を見たり色んな事へ連れて行ってくれたし、勉強を見てくれたりもしてくれた。
俺が事故のことを思い出して塞ぎ込んでいる時は、そっと抱きしめて「小虎が生きているのは姉さんとお兄さんが守ってくれたからだよ、小虎までいなくなっていたら俺が一人になっていたよ」と教えてくれた。
そんな生活を、半年。
甘やかされ大事にしてもらい学ばせてもらった俺は、自分でも驚くことに学年首席となっていて進学校として有名な高校からは推薦がいくつも舞い込んできた。
「俺は小虎が頭のいい子だと知っていたけれど…改めて驚いているよ。」
「奇遇だね、俺も驚いている。」
リビングテーブルに並べた推薦をしてくれた高校の説明とパンフレット、担任が分かりやすい様にと渡してくれたものだ。それを眺める侑叔父さんは俺の返事に笑いながらパンフレットを手に取っていく。
近い高校、遠い高校、寮生活の高校、様々な条件が勢ぞろいしたものだ。学校それぞれの特色を保護者である侑叔父さんと吟味している…けれど、正直どれでもいいと思った。侑叔父さんが選んでくれるならそれでいいとすら思えた。俺が生きているのは侑叔父さんのおかげだから。
どれも同じに見えてしまいそうな俺は置いといて、侑叔父さんはいくつもあるパンフレットの中から一つを手にして「あれ?」と声を上げた。下げていた視線を上げ、侑叔父さんを見れば瞳を大きくさせて物珍しげにパンフレットの写真を見ていた。
俺からはパンフレットの背表紙しか見えない、白い背表紙の中心には校章が一つあるだけ。校章の真ん中には難しい『麗』の文字、その周りを囲むのは鳥の羽を簡易化したようなもの。
「珍しいな、麗城が推薦出してくるなんて。」
「れいじょう?」
聞きなれない学校の名前に思わず聞き返した。侑叔父さんは頷きパンフレットをくるりとひっくり返し表紙をこちらへ向けた。表紙には白く大きい城のような建物が緑豊かな土地にそびえたっている写真だった。それだけを見ると海外の有名な古城かなにかにみえるが、門の所にはしっかりと日本語で「麗城学園高等学部」と金のプレートに掘られていた。
侑叔父さんと生活するようになって都内でも有数の高層マンション最上階に住み食べるものや着るものなどのグレードが上がった俺だけど、写真から伝わってきた高級感に眉を寄せた。
もともと庶民の俺だから言えることかもしれない、コレはお金持ちの匂いがする。ついつい顔に出してしまった俺に侑叔父さんは声を出して笑った。
「そうお金持ち学校なんだよ。しかも小中高一貫の。」
「一貫?そんなとこが推薦なんて出してくる?」
「だから珍しいって言ったんだよ。」
編入生自体珍しいはずなんだけどな、そう呟きながら侑叔父さんはパンフレットをめくった。
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