アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
1の2
-
渋谷は見た目で校則違反している、けれどそんな彼は風紀委員だ。なんでも入学式でスカウトされただか何だか。風紀委員に入れば金髪くらい見逃してやると言われ即答したらしい。そこまで金髪にこだわる理由が分からない。ちなみに染めているのはNGだけど地毛はOKだ。
最初は俺も同室者が金髪の校則違反している風紀委員と知った時はどうなるものかと思ったけれど、渋谷は案外まともだ。俺のことを「ちゃん」付けて呼ぶあたりはどうかと思うけれど。
嫌がることはしてこないし、パシリなんかにもされていない。むしろ食べたいものがあると必要な材料を調べて自分で買ってきて俺に作ってとお願いしてくる。おかげで買い物は渋谷担当だ。掃除も洗濯も一緒に生活するんだから一緒にやるのは当然、と前向き。意外と当たりの同室者だ。
なお、外れの同室者と一緒になってしまった奴が俺の後ろの席にいたりする。毎日疲れ切った顔で登校してきては俺に愚痴を言う。それを見て渋谷がからかいに来て、盛り上がったら件の同室者が乱入してくる…これも毎朝の行動パターンと化している。
俺の分の卵もしっかり焼けたら皿にのせてカウンターに置く。渋谷がちゃんと起きているなら自分で運ぶし、自分はまだ残っているヨーグルトとトーストとリンゴの準備をする。パンは適当にトースターに入れておいて冷蔵庫からヨーグルトとリンゴを取り出す。
リンゴの皮をむいて適当に切って小さい皿に、ヨーグルトは小鉢にいれるだけ。それらをカウンターに乗せた音に釣られてか渋谷が体を起こした。ガシガシ頭を掻き、やっと自分の髪が酷いことになっているのに気付いたらしく苦い顔。
「…小虎ちゃん、言ってよぉ。」
「別にいいかなと。」
「よくなーいでしょこれは。」
髪の毛整えてくる、と渋谷は言ってリビングから出て行った。俺はその背を見送りトースターの焼きあがったことを知らせる音に少し慌てて皿を用意。こんがり良い焼き色のトーストを乗せて冷蔵庫からバターを出して(渋谷にマーガリンを頼んだらなぜかバターを買ってきた)、リビングテーブルへ。
カウンターに並べていた朝ご飯たちをテーブルへ移動させ、後は飲み物にコーヒーを用意したところでリビングの扉が開いていつものヘアスタイルにきっちり整え終わった渋谷がやっぱり眠たげに欠伸。
しかし、眠たげにしていても整っている顔は曇らない。細めの眉に二重で黒い大きな瞳、肩まで伸びた金髪が動くたびにサラサラ揺れる。前髪を抑えるヘアピンは右に2本左に3本がお決まり。
用意し終わった朝ご飯を見るなりパッと笑顔を見せて「小虎ちゃんさっすがー!」といつも通りのお褒めのお言葉。
「少し早く起きたら作り立て食べられるのか…俺、早起き頑張ろっかなー。」
「そんなことのために頑張る意味ある?」
人は誰しも最適の生活リズムを持っている。朝起きて夜眠るよりも夜中に起きて昼間に寝るというリズムの方が体の調子がいいと言う人だっている。渋谷は少し夜更かしして朝ゆっくり起きる方が合っている気がする、なんか低血圧っぽいし。
椅子に座りまずはコーヒーを口にすれば、向かいの椅子に座った渋谷が「分かってないなー」なんて馬鹿にする言葉。別に渋谷の脳内分かりたくないんだけど。
コーヒーをテーブルに置いてトーストにバターを塗っていればベーコンを小さく切りながら渋谷が俺の名前を呼んでから、俺にとってはどうでもいい話をし始める。
「前にも言ったじゃーん、俺の前の同室者が俺に理想を押し付けてくる奴だったってぇ。」
「あぁそんなこと言っていた気がしなくもない。」
「小うるさくてさー大っ嫌いだったわけ、そんな奴が作ったご飯なんか食べたくないじゃん?」
「かもね。」
「だから毎日学食だったのー。だから憧れてたんだよねー出来立てのご飯を部屋で食べるの。」
渋谷は顔が良い、だからモテても当然だ。この学園には同性愛者なるものがそこらじゅうにいるっていうか渋谷もそうらしい。俺は人に恋をするという事自体良く分からないからどうも思っていないけれど。
渋谷はきっとこういう人なはず、そんな押しつけがましい理想を抱かれていることは珍しくないらしい。この学園には顔の良い奴にはファンがいたりする、それも熱狂的なのが。そんなファンが学校から寮まで一緒の場所にいるんだ、ストーカーされているようなものと言えばいいのだろうか。
適当な俺の相槌でも話を止めない渋谷は、本当に去年苦労したらしい。安心できる自室にすらファンがいたわけだから。部屋を変えるというのはできないわけじゃないらしい…ただストーカー紛いなことをする生徒だったとしても家柄が良かったりすると出来なかったりするらしいけど。
なんていうか、不平等な世界だよな。ここ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 44