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「風紀委員に会ったことあるか?」
「う、うん。」
渋谷の成績(特に英語)はあまり良くないという事は本人から聞いていたけれど…まさか成績以外の所でもヤバそうなところを見つけるとは思わなかった。
学校生活も一週間経ちました。入学早々にある新入生泣かせのテスト開始まで残り三日程度、その二日前から委員会で忙しい渋谷と部活で忙しい手嶋は俺に「勉強を教えてくれ」とお願いしてきた。今日が三日目の勉強会だ。
岡元先生に「ビシバシ教え込んであげて」なんて遠い目をして言われたときに察していたが、二人とも得意教科が体育と言うだけはある、と言った感じ。もちろん、この間の約束通りテストの内容は教えないように教えるということ前提で引き受けた。
残り日数的にも、二人の忙しさ的にも、晩飯を食べて寝るまでの数時間で少しずつ教え込んだ…岡元先生に言われた通りビシバシ。主に教科書で頭を叩く感じで。
そんな中、英単語を覚えられないと泣き出しそうな渋谷が「あ、そーだ小虎ちゃん」と話を切り出した。それがあの質問だ。
「なしたの?そんなの風紀委員の真樹だけじゃねーの?」
「渋谷以外に面識はないけど。」
手嶋も詰まっていた数学の問題を一時止めて話に混ざった、俺と手嶋二人そろって「編入してまだ一週間だし」と声をそろえた。
風紀でお世話になっているのは手嶋の同居人であって俺はまだ一度も関わっていない、そんなこと風紀委員である渋谷なら把握していて当然なのに…勉強のしすぎで頭がおかしくなってしまったのか、それとも…と心配して見れしまえば渋谷からは乾いた笑い声。そしてもごもごと口の中で何かを呟き飲み込んでは椅子に座りなおした。
「えーとー…ないならいいんだ、変なこと聞いてごめんねー。」
渋谷はそう言いつつシャーペンをテーブルに置いてウーロン茶のペットボトルを手にし俺から完全に顔をそむけた。
何かあって聞かれた、と言うのは明白。でも話したがらないのならしょうがない、手嶋を見ると同じ考えらしく力ない笑顔で肩をすくまれた。
渋谷がウーロン茶をテーブルに置いてもう一度シャーペンを手にしたから、とりあえず「special」のスペルミスを赤ペンでバツ印つけてやる。「spesial」になっているぞ。
本当は、此処に浦島が来るはずだった。
俺たち三人からすると…正直なところ困る話だった。しかし岡元先生直々にお願いされてしまっては断れない、一番嫌がっていた渋谷には今度ハンバーグを作ることを約束して四人での勉強会をすることを予定した。
が、結論。
「浦島がいないって幸せだわ…。」
「そーいや、今日もー?」
「おう、会長様が直々にお教えになるんだとよ。」
久々に羽を伸ばしきっているのか手嶋の柔らかな笑顔に三日前の話を思い出す。
なんでも「何者か分からない奴らと数時間一緒にいるなど許せん!」とお堅い武士様のような理由で生徒会長が俺と渋谷の部屋へ向かって行く最中に誘拐したそうな。
岡元先生との約束は守れなかったが、お蔭で静かな環境で気が散ることなく勉強できている。渋谷と手嶋は確かに…うん、馬鹿だけれども徐々に出来るようにはなってきている。会長のお蔭だ。
この調子なら良い点が取れそうだ、他人と一緒に勉強…それも教える側に回るのは初めてのことだったけれど案外実りの多い時間となっている。
この状態で受けるテストはさぞかし良い点が出せそうだ、しかしテスト免除。悲しきかな、当日は御年71歳の事務員、七井さんと中庭の清掃を命じられているのだ…七井さん好きだからいいけど。
「あーもう英語嫌い!海外とか行かないから英語免除してー!!」
「俺も数学なんて将来使わないから免除してくれー。」
二人は免除が羨ましくてしょうがないらしい、行き詰るたびにこうして免除を求めてくる。
「全教科赤点なしでハンバーグ。」
こういう時は、もので釣るのが良いと侑叔父さんから習った。俺も昔、小学校に上がるまえ侑叔父さんに「ピーマン食べれるようになったら勉強机買ってあげる」と言われて克服した過去がある人間。
「うううう~」と呻く二人にそれぞれ英語と数学の教科書で頭を叩いてやる、あと数日の我慢だ頑張れ。
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