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生徒会には、四つの役職と四人の生徒がいる。
会長の三年、大宮篤志(おおみやあつし)、小等部の時からずば抜けたカリスマ性を発揮しクラスでは勿論、全学年を通して意見を言い実現させる力があった。家は海外展開もしている電子機器を取り扱う大宮グループ。長男で将来は跡を継ぐことを約束されている。
幼いころから立ち振る舞い、テーブルマナー、言葉遣いなどに始まり人をうまく動かす方法などを教え込まれてきたそうだ。勉強もまた然り、非の打ちどころのない成績で常に首席。
黒いサラサラの髪に映える切れ長の青い瞳は見る者の心を奪う。なんでも祖父がフランス人だとか。恵まれた容姿がこの学園での彼の力を確立させた。
書記は二年の若咲鈴(わかさきりん)、生徒会のお姫様で愛称は「すず姫さま」。甘え上手で、自分に靡かないものは痛めつけてでも靡かせ跪かせるという我儘女王様で有名。
成績は難ありらしいが、家は超高級洋食レストラン。五つ星シェフの父にもらったセンスとモデルの母にもらった容姿が何よりの武器。大事に大事に育てられたせいで手に入らないものなど無いとしているそうだ、それこそお姫様のように。
蜂蜜色のふわふわの髪に、茶色のくりくりの瞳が女の子の様で愛らしいと小等部の時から人気で小学一年生にして異例の親衛隊持ちになったという伝説あり。
会計には二年の叶野幸仁(かのうゆきひと)、脱力系男子で緩く生きているらしいが綺麗な容姿とここぞというときの成績で人気者。お遊びで染めた派手なオレンジ髪は長めで軽く後ろでまとめている、それとは対照的な黒い瞳は垂れ目がち。それがまた、雰囲気出ているそうだ。家柄は至って普通、いわゆる庶民。
だが貪欲、表だっては静かにやる気がない様に見せて実は好機を待っているだけ。頭の中はいつだってコンピューターのように考えをめぐらせ最善の策を描いている。
それは周りの生徒に対しても行われている、どう動けば自分に従うかどうか…常に計算しつくしているそうだ、お金持ちだらけのこの学園では珍しい存在感は目を引き、惹きつけた。そのおかげで生徒会の一員になった。
そして、三条副会長。
「単刀直入に言うと、その三人がお仕事しなくて困っているんだよね。」
さっきまでの笑顔は、三人のことを話している間に消えてしまった。
時計の針はすっかり14時を通り過ぎてしまったが、俺と渋谷は「身体測定があるんで…」なんて言わない。もしかしたら渋谷がそういうことを言い出すかもしれないと危惧していたが、それはただの思い過ごしとなった。俺と同じ、黙って話を聞いている。
少しばかり冷めてしまった紅茶を飲み干す三条副会長の表情は、困っているというよりも怒っているが正しいだろう。眉間に皺を作って空になったカップを、乱暴に置いた。紅茶の良い匂いを含んだため息を一つ、そして改めて困ったとアピールなのか肩をすくめてみせた。
「それもこれも、君たちのクラスにいる宇宙人のせいだよ。」
「……うちゅうじん、いるんですか?」
「小虎ちゃん。アレだよ、浦島太陽。」
現実感のない単語に本気で聞き返してしまえば、三条副会長が一瞬の間を開けてから会った時のように優しい笑みを浮かべてくれた。渋谷は「もー」と俺の肩を叩いてきた、痛くないからこれはアレか…突っ込み、というやつか。
「去年の10月に行われた当時中等部三年生たちの高等部への見学の時に会ってしまって気に入って…それ以来たびたび中等部に足を運ぶ始末。」
「…あーそうだったかも。」
その頃よりもひどくなったよ、そう苦笑いを浮かべた三条副会長の話に去年を思い出したのか渋谷も苦笑いを浮かべる。この様子だと相当なんだろうな……って、七井さんが中等部の校舎まで車で10分って言ってた気がするんだけど。
確かに浦島は生徒会長と書記に気に入られているというのを手嶋から聞いたことがあった、実際俺たちの1年A組に2回ほど浦島を拉致しに現れたこともある。会計がどうなのかは分からないけれど二人は気に入っている、そう分かる。けれどそれが仕事をしないとなると…つまりアレだろうか。
「仕事をするべき時間に浦島に会っているので滞っていると。」
なぜ仕事をしないのか、それは単純なことだったわけだ。休み時間となると浦島に会いに行ってはどこかへ連れ出しているからなのだ。単刀直入に簡潔にまとめたことをズバリ言えば「ご名答」と米神あたりを掻きながら三条副会長は笑顔を薄めた。
テストの時間は終了した、一年生以外は寮へ戻り自室学習となっている。が、一部委員会などは学校へ残り作業なり話し合いなりを許されている、それは生徒会も例外ではないだろう。
実は中庭清掃をしている時、七井さんが「生徒会」についていろいろ話してくれた。
生徒ながら教師の様に全校生徒を纏め導いている生徒会は、見ていて清々しいと。時には遅くまで残ってご飯を食べ損ねる生徒会もいたという。
それほどまでに膨大な仕事量を抱えているのだが、七井さんが見てきた生徒会は絶対にそれを表に出さなかった。生徒には笑顔を向け胸を張って生徒会という特別な存在を示していたと。
「運が悪かった、のかな。」
せめてあと1年早く生まれてきていたらな。
少しばかりトーンを落とした声が凛と響いた、ピアノの低い音色の様だった。しばらく尾を引いた、心の中に。
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