アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3の0※竹田視点
-
面倒が嫌い、自分に仕事が増えるようなことならなおのこと。
しかしつまらない…平凡、平穏と言った言葉も嫌い。とどのつまり自分自身が面倒くさい奴なんだ。面倒な奴だからこそ面倒なことが嫌いで普通にしているのが嫌い。
恋愛なんてもってのほか、馬鹿馬鹿しいとすら思う。なんで自分が他の奴のことを思い行動しなきゃならないんだよふざけんな反吐が出る虫唾が走る殺したくなる…誰だって自分の身が大事だろう?
「千佳はそういう顔が一番似合うよな、人殺しそうな顔。」
だがしかし、生きていくうえでの上下関係…ヒエラルキーは守る。そこまで馬鹿じゃない。
俺の上司に当たりやがる龍崎は嬉しそうに笑って見せた。お前も大概酷い顔してやがる…屑を踏み潰して喜ぶ時と同じ顔。ま、龍崎らしいし…その顔している時は機嫌が良い証だ。
風紀委員のヒエラルキーは分かりやすくて助かる、一番上は龍崎、その下に俺。龍崎にさえ逆らわなければ俺は何したって許される、下っ端に命令出すのもパシリにするのも許される。校内でアホなことしているホモたちを殴っても許される。
ソファの上で胡坐、という行儀悪ぃ俺の上司、龍崎。校庭でどっかの運動部が声出しているのが遠くで聞こえてくる、せっかくなら龍崎が言った言葉かき消すくらいでかい声出しやがれよ。
龍崎の言う事だけ絶対、絶対…
「ぜってー嫌だ。」
「だろーな。でも拒否権なんてねぇから。」
俺と龍崎だけしかいない風紀室ってだけで嫌な予感はぷんぷんしていたと、何か面倒な話をするときは誰も居やしねぇ。俺に副委員長をやれと言った時も誰も居やしなかった。
それと同じくらい面倒な話を、吹っかけられた。ただ前はちゃんと引き受けてやった、その時はすでに俺の上に立っていた龍崎に叶うまいとあっさり諦めた。いやそれは今だって変わりはしねぇけど、けど。
ヒエラルキーは変わっていねぇ、相変わらず龍崎は俺の上に立っている。野生にしろなんにしろ生きていくうえで守らなくちゃならねぇ掟…分かってるんだ。
それでも引き受けたくねぇ話がやってきたわけだ。そしてこうして俺が断ることを知っていながら、龍崎は俺に言ってきやがる、性質悪い奴…俺よりも面倒で頭良くて、最低な男。
「分かってんだろ?真樹に任せられねーってこと。下手に暴れられたら俺の名誉が傷つくんだっての。でもよ千佳ぁ、お前なら何とか出来んだろ?」
胡坐から膝を立て、その上に腕を伸ばしだらしのない姿。この風紀室が自分のものだって見せつけている委員長の顔は笑顔が消えていく。長引く話に面倒くささを感じているわけだ。それはこっちだって同じだ。
あんたも面倒なのは嫌い、それは分かってんだけど俺も面倒なのが嫌いってこと…あんた知ってんだろ。…お互い妙に似ているからこそ、面倒が少ないと思い考え俺を副委員長にした龍崎には今更なことか。
「…自分でやるって考えはねーのか。」
「はぁ?こんなくそ面倒くさくて生徒会のためになっちまうことを、なんで俺自らやんなきゃなんねーの?」
いつの間にか問いかけていた声音は一方的なもんになっちまった。もう俺に答えなんかありゃしねー、いつから龍崎が掘った落とし穴にハマっていたんだか分からねぇ。分かるのは…落ちた穴が深すぎるってことくらいだ。
「浅海を見張っとけ。あの迷惑なガキに近付けないようにしろ。」
それよりもサバンナで豹を見張る方が、きっと楽だ。
答えすら聞かない口調に隠しもしないでため息吐いてやる、くそでかいため息を。
何度でも言ってやる、俺は面倒が嫌いだ。細かいことするくらいなら殴りあって片付ける方を選ぶ、木を避けて歩くくらいなら切り刻みながら真っ直ぐ進んでいく、迂回した方が確実と言われようが危険な直線を選ぶ…それもこれも、自分の力を信じているから。
浅海、俺と同じ二年。俺とは正反対の性格で、一番嫌いな奴。
「…なんかあったら、殴っても良いんだな?」
「殴る、蹴る、投げるは俺が許してやる。」
あくまで時間を稼ぐだけ。
一学期始まって二週間足らず、俺はとんでもなく面倒なことに巻き込まれた。一年生のクソガキのせいで。
しかも俺がやることは生徒会に繋がっていきやがる、冗談じゃねぇ…あんな救いようもない頭すっからかんな奴らめ。
渋谷には秘密にしろよ、龍崎が後付してきた言葉には頷いておく。それは言われなくてもやるつもりだった、なにせあいつと同じクラスだし知ったらでしゃばって来るのが目に見える。ま、後で知ったとしても五月蠅そうだけどよ。
やる気はない、けどよ…やることになっちまったことはやりきる。それが俺の生き方だ。
「ちっ、無理矢理乗せられた船…だけどよ、やってやる。」
どうせ目の前の男はなにしたって逆らわせてはくれねぇだろうし。
そうなるとまずは浅海の居所を探して動向を探らねぇと…その辺にいるだろう風紀の下っ端捕まえるために俺は何も言わずに龍崎に背を向け風紀室を出た。扉を閉める直前、笑い声が聞こえてきて「良い様に扱われちまっている」と思っちまうのが悲しいところだ。
風紀室より廊下は少し冷えていた、ヤケクソ気味になっていた頭には丁度いい。確かに面倒だけどよ…色々風紀を馬鹿にしてやがる浅海のことを理由つけて片付けられるチャンスなんじゃねーか?この間も散々やってくれやがった、いい加減あの余裕綽々の顔を歪めることが出来る。
「あとは浅海と大宮と…例の、小虎ちゃん次第かぁ?いっそどいつもこいつも事故かなんかでいなくならねーかな。」
俺が物騒なこと考え歩き出した、そのまさに同じときに残された風紀室で龍崎が据えた顔で俺以上に物騒なこと考えていた。その思考の大本は、自分のため。それともう一つ。
「勝つか負けるか?俺が勝つに決まってんだろ、浅海よぉ。」
負けず嫌い。
浅海。お前は馬鹿にする相手を間違えてんだよ、せめて俺だけにしときゃもう少し長生きできただろうに。死人に口なし、あるのは添えらえる花だけさ。
誰がゼンマイを回したんだか知りやしねぇ、分かるのはそのゼンマイのせいで動きだすカラクリの中に俺がいるってことだ。同じく浅海も、龍崎も、大宮も、渋谷も、みんなみんな含まれていやがるんだ。ただ歯車が一個多くて余計なカラクリまで動きだしちまったんだ、だから事が大きくなっていっちまったんだ。
早く直さなきゃこの学園は踊りっぱなしだ、俺たちカラクリに安息の時がこねぇ。早く直さねぇと…。
直すのは誰なんだろうな。
2014/12/14
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
20 / 44