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『風紀室は生徒会室出て右へ真っ直ぐ行くだけで着くよ、迷子になる方が難しいから大丈夫だよ。』
風紀委員…良い噂を聞かない、そして生徒会にとって天敵。しかしその実、持ちつ持たれつの関係にもあるらしい。
生徒会にとって痛いところは風紀が揉み消したり、風紀にとって面倒なことは生徒会でなんとかしたり…今回の一件もそうらしい。書類にあった特別棟三階の窓ガラスが割れた事件の詳しい話を伺うと、いつも通りのこの学園の生徒はすべてお友達発言をし、揚句に腕に抱き着いてきた浦島にキレた風紀委員が暴れに暴れ割れたものだそうで。
しかも一枚や二枚じゃなかった、四枚割ったんだって。どんだけ嫌だったんだろうか。
俺は浦島と同じクラスだから、浦島が好意を寄せてくれる相手にそういったスキンシップを行う所なんか良く見てきた。だから腕に抱き着くくらい普通とも思えた(渋谷も手嶋は良く抱き着かれている)。
(よほど浦島に免疫がなかったんだろうな。)
先ほどの副会長との話を反芻しながら、生徒会を出て右へ真っ直ぐ歩いて行く。たまにすれ違う普通の生徒の瞳が「あ」と言ってくるのも気にせずに真っ直ぐ。
こういうのには慣れるしかないのだ、渋谷も言っていた。物珍しく見られるのは最初こそ辛いけれど、放っておけば減っていくものだと。一つ一つ気にしていたらノイローゼになってしまう、だから開き直るくらいが丁度良い…だって。
渋谷らしい明るい対処法だ、とちょっとだけ羨ましく思ったことを思い出しながら、10個くらいの教室の前を通り過ぎた時(本当に無駄に広い学園だ)、目的の場所を知らせる文字…
「壊れてる。」
音楽室とか家庭科室とか、そう言った特別な教室には必ず表札があるものだ、生徒会室にもある。少し違うのはこの学園の標識がキラキラの金色ってことくらい。
その標識によって俺は数メートル先に目的地があることを知れたわけだ、が…「風紀委員室」と書かれた金色のプレートがどういうわけかヒビが入っており、今にも取れてしまいそう……接着剤を使った痕が見えるという事は取れているのかもしれないけれど。
風紀委員は物騒な人が多いと渋谷が疲れた顔で話してくれたが、そういうことだろう。窓ガラスの一件も壊れた金色のプレートも不良が多いという噂も…。
あと数歩の距離なんだけど、ちょっと足が重くなった。せめて委員長さんは話が通じる方でありますように。
そう願いながら大事な書類を持っていることを確認してから、しっかり歩く。本当は渋谷がいればいいんだけど…いるのかな?
壊れた金色のプレートが気になる中、扉の目の前まで来て、驚き言葉を失ってしまう。
『風紀以外 扉開けるべからず』
そうでかでかと書かれている紙が扉に張られていた、ガムテープで。
これは…仕事で来た俺も風紀以外に振り分けられてしまい扉を開ける事すら叶わないのだろうか。それでは副会長から頂いた仕事を完遂することが出来なくなる、生徒会補佐の意味が無くなってしまう。
郷に入っては郷に従えと言う言葉がある、この学園ではこれが当たり前のルールなのかもしれない、ならばこのルールは守らなくてはならないのだろう。
委員長か副委員長に渡せと言われた、が、入れないのなら扉の前にでも置いておけば誰か委員の人が拾って委員長にでも渡してくれるかも……そんな上手い話があるわけないのだけれども。
…このまま考え続けても、良い方法は思いつかない。断言できる。こうなると、俺にしか許されないことをするだけだ。
郷に入っては郷に従え、郷に入っているかもしれないけれどまだ入って日が浅いものでルールとか分からないので従えません。
「すみません、生徒会の使いなんですけれど。」
何も知らない何も見ていない、そう言い聞かせて俺は浦島の強心臓と空気読まない感じを見習って扉をノックした。
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