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カメラが捉えた光景は、警備会社だけが記録する…わけではない。HRも近づいているというのにいまだ黒のスウェットを着ていて、学校へ行く気ゼロといった生徒の脳にも記録された。
そこに映ったのは、確かに生徒会室の鍵を受け取った、直接は会ったことない、生徒会補佐。
「…鍵、か。」
自分のために全てを使い切りたい、そのためには犠牲が必要。でも自分からは犠牲を作りたくない、だから他人を犠牲にする。そう、たとえば…何も知らない羊一匹とか。
遊びで染めた緋色の髪、今はもう過去の色。根元は徐々に元の黒に戻ってきて夕日を食べる闇のようだ、そんな変な色でも染め直したり切ったりしない決してしない。これこそが、今の自分を示す色だから。
画面に映る瀧野たちからは目を離さずにパソコンの横に置いてあった白紙のメモ紙にペンを滑らせた、手元を見ていないせいで一文字一文字の大きさがバラバラになってしまい読みにくくなった文字で書かれたものは…
『19時 S階にて待つ』
「……」
せっかく鍵をもらったというのに、放課後になって生徒会室へ行ってみればすでに副会長が仕事をなさっていた。どうせなら鍵を閉めておいて欲しかった…今の俺は買ったばかりの靴でお出かけするのが楽しみって状況の小学生と同じ気持ちなのに…つまりは、ぴかぴか綺麗な鍵で古めかしい扉を開けるという事を楽しみにしていただけです。
そんな気持ちがバレて高笑いされた、笑われて当然だよな…と少しだけ恥ずかしくなったのは数時間前の事。
約束の18時になる前に当てられた仕事を終えた俺は、いつもより早めに帰ることにして副会長よりも先に生徒会室を出た。金ぴか鍵の初めての仕事として鍵を閉めてやろうかとも思ったけれど、扉越しに高笑いを聞くのは嫌だったのでやめておいた…ゴールデンウィークになれば嫌ってほど開けて閉めてが出来るんだから我慢だ。
さて寮に帰って晩御飯を作らなくては…と考えながら靴箱を開けると、素敵な手紙が入っていた。
「…えすかい?」
封筒に入っていないし便箋ですらない手紙は白紙の紙に殴り書きされているようだ、なんていうか文字が凸凹だ。大きな字もあれば小さな字もあって読みにくい、これはこれで味があると言えなくもないけど。
四つ折りにされて俺のローファーにもたれかかっていたその紙には、聞きなれない言葉が書かれていた。S階、とはどの階だろうか。説明など無い簡潔な手紙、裏を見ても差出人の名前は見つけられず。これはどうにも怪しい手紙をもらったものだ。
俺の人生において、手紙を使って誰かとコミュニケーションをとるという事は今までなかった。なんとなく新鮮で楽しい…気がするんだけど、内容が内容だし差出人不明じゃどうにも上がらないテンション。
19時と指定された時間から考えるに…寮の中にある場所だろう。なにせ寮の玄関は21時に施錠されるからだ。それもあって20時くらいから警備の人が全階層の廊下を見回り部屋に戻っていない生徒に注意を促し始める。また寮内にいない可能性がある生徒がいるようなら捜索されてしまう、そんな面倒なことは回避したいところ。
寮の中にある場所でS階にふさわしい場所……おそらく、あそこなのだろう。
「寮の、最上階?」
Sクラス所属かつ首席の生徒やそれに近しい成績の生徒…または各委員長や生徒会所属生徒に与えられる特別な部屋がある場所。学園でもトップの成績を収める生徒は寮最上階の一人部屋が与えられるという、一般生徒は立ち入りできないとか。
俺も一応生徒会の一員になったけれど、今の所一人部屋に空きがないらしい。別に一人部屋に憧れていないし渋谷との生活も楽しいのでこのままで構わないし。
そんなS階を指定してきた。もうこの時点で、差出人は限られているわけだ。
(委員長や成績良い人と接点はない、つまり生徒会の人か?)
渋谷には話せないな、小さくため息を吐き出しながらブレザーのポケットに手紙を入れた。ご飯食べたら適当に嘘言って抜け出さなくちゃな。
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