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作り上げた俺の世界。
周りにいっぱい、味方いっぱい、安心で安全で平和で幸せな世界。
守ってくれる人ばかり、もう俺は一人じゃないし戦わなくて済むんだ。皆がみんな俺の事守ってくれるんだ、優しくしてもらえるんだ、構ってもらえるんだ、愛してもらえるんだ。
なのに、
なのに。
「ゆき…。」
遊んであげられない。
そう言って俺に背を向けたゆきの顔は、笑顔だった。垂れ目のせいで大人びて見えるゆきなのに、あの笑顔の時は一歳年上どころか同じ…いやそれよりも幼く見えた。あの笑顔に似ている…子供の頃の俺の写真に。お気に入りのぬいぐるみを抱きしめてカメラに笑顔を向けていた俺の笑顔に。
そんな笑顔…一緒にケーキを食べてもお話していても一度たりとも見せてくれなかったのに。どうしてあんな無垢な笑顔を俺に向けたの?それも…俺から、離れるために。
一緒にいてくれるんじゃなかったの?あれだけ遊んだのにあれだけ楽しんだのにあれだけ時間を重ねたのにあれだけ、あれだけ、あれだけ。
「それなら、いい。」
いいや、もういらない。
俺のことを捨てたなんて認めない、俺がゆきを捨てたことにしてやろう。ゆきなんていらない、ゆきなんて要らない、ゆきなんて大嫌い。かわりならすぐ傍にいる、まだたくさんいる。だけど抜けた穴は埋めなくちゃ、誰が良いかな?
ゆきは髪を染めて不真面目そうだけど本当は真面目だった、凄く頭が良い人だった。そんな人他にいたっけ?うーん、分からない。
あ、そうだ!頭が良いわけじゃないけれど、髪を染めているのに真面目で明るくて優しそうな人がいるじゃないか。いつも委員会で忙しそうだから一緒にケーキを食べようって誘ったら喜んでくれそうだ。
「そうしよう。大介も良いけど…目立つ方が良い、真樹が良い。」
キラキラの金の髪、クラスでも目立つ明るさ、笑顔が多くて格好いい、親衛隊持ち、風紀委員…バッチリだ。決めた、君に決めた。
そのために…大介と小虎をなんとかしないとな。大介は最悪こっちに引き込むとして、小虎は要らない。邪魔なだけだ、物静かで目立たないから要らない。それに少しだけ…俺に似ている、偽物の俺に。
作戦は出来上がった、あとは実行するだけ。さぁ今日からまた楽しいゲームの始まりだ!
下手な鉄砲、数打ちゃ当たる。
ソレは去年の夏に撒いておいた種、結局種から芽を出したのは一つだけ。大きなひまわりが咲き誇るか、棘まみれで厄介なバラが咲いてしまうか、小さくてありきたりなタンポポが咲くか。
花次第では摘み取ってやろうかな…って思っていたけれど今のところその心配は無し、むしろアイツが気に入るくらいの良い花だ。
俺は昔から運が良い、感も良いし勝負事にはめっぽう強い。特に…こういうデカくてビビるくらいの勝負には。
「浅海さんはゴールデンウィークどうするんすか?」
「帰る家もないからな、此処にいるよ。」
母親に二度と帰ってくるなと言い渡されたのは五年前、そうだあれからもう五年だ。永遠にD組だと縛られたのは五年前。見せてやるさ、永遠にD組から出られない底辺の力を。
種まきをしたときは賭けと呼べるものじゃなかった、ただどんな花が咲くのか…そこは見てからちゃんと賭けておいている。
アレはきっと大きな花になる、まぁ花の事なんか詳しくないから分からないけれど綺麗ってわけじゃないけれど可愛いってわけでもなく…新種の面白い花になると思う。それこそこの学園をひっくり返すくらいには面白い花がね。
どうせゴールデンウィークは暇なんだ、楽しませてもらおう。
「ま、花でも見に行くよ。」
龍崎博人、永遠のD組でも馬鹿でも愚かで殺人未遂する阿呆でも出来ることがあるんだぜ。
2015/02/19
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