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外見だけでも
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「袮緒、髪、染めたの?」
自席で仕事をしているオレ、山本 袮緒(やまもと ねお・22)に、総務の佐藤 愛生(さとう あおい・32)さんが精算伝票を渡しながら、声を掛けてきた。
就職のために一度、黒髪に戻していた。
1年振りに髪を染めた。
「ダメでした?」
精算伝票を受け取り、領収印の欄に自分の判を押しながら、さらっと言葉を放つ。
「いや。うち、そんなに厳しくないから、大丈夫だよ」
愛生さんは、オレの明るい茶髪を見ながら、にこりと笑む。
軽くなりたいんだ。
黒く重たいイメージの髪を茶色にして、少しでも軽くなりたい。
大好きな人に想いも伝えられずに終わった恋。
そんな恋を引きずらないように、オレは軽くなりたい。
オレは平気。傷ついてなんて、いない。
精算伝票を愛生さんに渡し、オレはお金を受け取る。
「今日、飲みに行かない?」
愛生さんは唯一さんが宇野さんと一緒にいることが増え、暇になったとオレをたまに飲みに誘った。
もともと、愛生さんとそんなに接点があったわけじゃない。
少し前に、同期入社で入ってきた宇野 智樹(うの ともき・26)さんに恋をして、失恋したオレ。
宇野さんは愛生さんの同期、佐藤 唯一(さとう ただひと・30)さんと両想い。
オレは、宇野さんに好きなことも告げられず、彼らの告白現場を目撃して、泣き崩れていた。
そこに、愛生さんが来て、オレを励ましてくれた。
それから、愛生さんは、なにかとオレを気遣ってくれている。
「いいですよ」
別に大した用事もないので、オレは、愛生さんの誘いを受けた。
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