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素っ気ない態度
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失恋して元気のない袮緒。それを見せまいと一生懸命、強がってみせる。
オレは、なんとかしてやりたいと思っていた。元気づけてやりたかった。
袮緒は、見かけや態度がすごく軽く見えるけど、実はすごく真面目で純粋なコだとオレは感じていた。
忘年会で使ったオレの行きつけの小さなバー。カウンターが7席、ボックス席が2つ。
客は俺たちと、カウンターの端に座る若い女が1人。若い女は楽しそうにマスターと話を弾ませている。
オレと袮緒はカウンターに並んで座り、酒を飲んでいた。
袮緒は、ハイボールのグラスを回し、揺れる水面をぼんやりと眺めながら、口を開いた。
「結婚して、宇野さんも手に入れて……唯一さんってすごいですね」
袮緒は、自嘲するように笑う。
「あれ、フェイクだよ。唯一は結婚してないよ」
驚いたように袮緒の視線が一瞬、オレに向く。でも、すぐにその視線はグラスに帰っていく。
でも、何か安心したように、袮緒は無意識に微笑んでいた。
「袮緒は小さい人が好きなの?」
オレは、ビールグラスを傾けながら、袮緒に問う。
宇野は、短めの黒髪できらきらした茶色の瞳、小柄なすごく可愛らしいコだった。
「こだわりはないです。……てか、ちょっと気になっただけですよ」
袮緒はあっさりと切り捨てるように言う。
「でも、本気で好きだったんでしょ?」
「……気の迷いですよ」
さも興味なさげに言葉を吐く。
オレはもう、気にしていない。傷ついていない。と、言うように。
気の迷いで、あんなに泣いたりしないと思うけど……。
さっきだって、唯一が結婚していないって知って……宇野が、好きな人が幸せで、嬉しかったんでしょ?
君は、軽い気持ちで人を好きになるようなタイプじゃないよね?
「そんなに強がらなくていいよ。袮緒が誠実でいいコだって、オレは知ってるよ」
オレは袮緒に、にこりと微笑んで見せる。でも、袮緒は、そりゃどうも、と素っ気なく言葉を返すだけだった。
仕事に対しても一生懸命取り組んでいるのをオレは知っている。
陰で一生懸命努力して、みんなの前ではチャラチャラと装って見せる。
どうしてこのコはこんなに必死に自分を隠すのだろう。大きく見せようとするのだろう。
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