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間違えたくない
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愛生さんがオレを見て、にこりと笑む。
そんなに頑張らなくていい、オレの前では肩の力を抜いていい。
そう、言ってくれてるみたいだった。
でも、オレ、本当の自分は見せられないよ……。
オレ、きっと、間違っちゃうから。
オレのこと、好きなのかなって、誤解、しちゃうから。
知ってるよ。愛生さん、女の人が好きなんでしょ?
オレと恋愛なんて出来ない、でしょ?
もう、嫌なんだ。間違って、傷、つくの……もう、嫌、なんだ。
オレが16歳の時。
バイト先で知り合って、苗字が一緒だねって、オレのことをすごく可愛がってくれた山本 泰樹(やまもと やすき)さん。
オレより少し小さくて、7歳上のバイト先の先輩。
こんな大きななりをして、すごく弱いオレ。
淋しくて、かまって欲しくて、いつも、飢えてた。
遊びに連れて行ってくれたり、たまにご飯を奢ってくれたり。
オレはすごく嬉しかったんだ。
車の中で手を繋いでくれたり、オレの方が大きいのに頭を撫ぜてくれたり。
もしかして、泰樹さんはオレのこと、好きなのかな?って誤解しちゃった。
そして、間違った。
『オレ、泰樹さんのこと、好き』
必死の覚悟だったんだよ。
『んー、俺も好きだよ。袮緒のこと』
そう言って笑ってた。
なのにさ。急に言うんだもん。
『俺、結婚する』
って。
オレ、どれだけ傷ついたと思う?
でも、泰樹さんには、わかんないよね。
だって、オレの恋愛感情と、泰樹さんの感情は違ったから。
そのとき、女には勝てないんだって思ったんだ。
それから、オレ、自分の苗字嫌いになった。
もう、間違えたくない。
もう、傷つきたくない。
重たくなったら負け。真剣になったら負け。
好きの気持ちが増えるだけ、オレの傷が深くなるだけ。
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