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チャラそうな真面目っコ
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しばし、きょとんとしてしまった。
唯一(= 男)の今彼(= 男)が、あのコ(= 男)の好きな人?
「ん? てことはこっち?」
俺は自分を指さし、愛生に問う。
そう、俺もゲイ。唯一とは、ゲイ仲間みたいなもん。
別に、恋愛感情はない……というか、あんな大きくてゴツイ男に興味は、ない。
愛生とは唯一を介して知り合い、いつのまにか飲み仲間になっていた。
「そう。すごく可愛らしい新入社員入ってきたんだけど、あのコの同僚でね。それを唯一に取られちゃった感じかなぁ……」
愛生はふぅっと小さくため息を吐く。
「そっかぁ」
切ないなぁ……。同じ職場で、想い人は他の人を想っている……。俺なら辞めちゃうかも。
「あのコ、軽そうに見えるけど、意外に純粋なんだよね。失恋して泣いちゃって……いつも、一生懸命強がってるみたいで、見てるこっちが切なくなっちゃうよ」
そう言って、愛生は苦笑した。
「とりあえず、了解。戻ろう、彼、放っておかれたら暇だろ?」
愛生を促して、元のカウンターに戻る。
カウンターの彼は、何をするでもなく、ぼぅっとグラスの氷を眺めていた。
「マスター、俺にビール!」
カウンターの端で女と話しているマスターに告げると、片手を上げて、了解の合図。
ぼぅっとしている彼の横から、顔を覗き込み、声を掛ける。
「初めまして、須栗 和良です」
そう言って、彼ににこやかな笑顔を向けた。
「ども。袮緒です……」
袮緒は、オレをちらっと見て、興味なさげに名前だけを俺に告げた。
俺は袮緒の隣に腰を下ろす。愛生は袮緒を挟んで隣の席に戻った。
「源氏名? 苗字は?」
俺の発言に袮緒はあからさまに嫌そうな顔をした。
「本名ですよ……苗字、いりますか?」
袮緒は、酷く面倒臭そうに話す。
いや……別に知らなくてもいいんだけど……。
俺は思わず、苦笑して、愛生に救いを求める視線を投げかけた。
「山本 袮緒、22歳、チャラそうだけど、真面目っコ」
そう言って、愛生は袮緒の頭をぽんぽんと叩く。
袮緒は、眉間に皺を寄せて、愛生を見やる。その眼は、変なこと言わないで下さいよ、と訴えていた。
この時は、好奇心だった。見た目チャラそうな、素っ気ない彼の本心を少し覗き見たくなった。
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