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揶揄される
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「袮緒って、なんかカッコいいな」
須栗さんは、ビールグラスを傾けながら、オレの横顔をまじまじと見て、にこりと笑んだ。
「カッコよくないですよ……。チャラいからそう見えるんじゃないですか」
須栗さんに視線を向けず、くるくるとグラスの酒を回す。
急に、須栗さんがオレの顎を掴み、くいっと自分の方に向けた。
じっとオレの瞳を覗き込む。オレは、須栗さんが何をしたいのかわからずに、目を瞬く。
真っ直ぐに瞳を覗き込まれ、オレの心臓はドキドキと鳴る。
顔が火照るのを感じ、慌てて、視線を背けた。
心の中が見透かされそうで……化けの皮を剥がされそうで、怖かった。
「須栗っ……」
愛生さんの言葉に、須栗さんはオレの顎から手を放し、ははっと笑った。
なんで笑ってんの?
からかわれたようで気分が悪い。
「やっぱり、カッコいいよ」
オレの頭をぐりぐりと撫ぜる。
「そりゃ、どうも」
須栗さんに乱された髪を整えながら、オレはさらっと言葉を放つ。
須栗さんの意図がまったく掴めない……。
こんな無意味な会話を早く終わらせたかった。
化けの皮が剥がされる前に。
男にカッコいいと言われ照れているオレなんて誰にも見せたくない……。
「なんでそんなに素っ気ないんだ? 俺のこと嫌い?」
須栗さんは、少ししょんぼりした顔で、オレに問う。
「素っ気ないのは地です」
会ってたった数分で、好きも嫌いも、ない。
オレは須栗さんを見ずに、ハイボールを一口、口に含む。
須栗さんは、また、オレの顎に手をかけ、くいっと自分の方に向けた。
口に含んだハイボールがごきゅっと音を鳴らして喉を通り抜ける。
顔がかぁっと熱くなるのを感じる。
須栗さんに対し、恋愛感情があるわけじゃない。
だた、その行為にドキドキしてしまった……。
須栗さんの手を無造作に払い除け、キッと睨みつける。
「なんなんですかっ!」
恥ずかしさに声が荒く、大きくなった。
いつも素っ気なく、感情を出さないオレの怒気を孕んだ声に、愛生さんが唖然としていた。
怒鳴ったオレに須栗さんはにこっと笑う。
「それが、お前の地だろ?」
たった数分。素のオレなんて知らないクセに……。
そう思うと、少しイラッとした。
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