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擽られた心
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「悪かったな……」
袮緒の居なくなった椅子に移動しながら、愛生に謝罪する。
「んー……初めてみたかも」
袮緒の出て行った先を見つめながら、愛生がぼそっと呟いた。
「なにが?」
「袮緒の荒れてる感じ……?」
視線を俺に戻し、愛生が言葉を繋げる。
「なんかいつも何にも興味示さなくて、素っ気なくて……あんな声、聞いたことなかったんだよね」
愛生は、目をぱちぱちと瞬かせ、口元に少し笑みを浮かべる。
「失恋したときに泣いてたのにもびっくりしたけど、今日も驚いたわ……」
「あいつ、絶対、無理してるよな……」
俺は、ビールグラスを傾けながら、ぼそっと呟いた。
初対面、ほんの少し会話をしただけ。それでも、袮緒が無理にチャラ男を演じようとしているのが容易に感じ取れた。
「やっぱり、そう思う?」
俺の声に反応して、愛生は眉間に皺を寄せ、困惑顔で言う。
「何とかしてあげたいんだけど……オレじゃ無理っぽいんだよね」
ははっと力なく笑う愛生。
「んー。失恋が原因なのか、違う原因があるのかわからんけど……まぁ、まともな恋愛できない俺らは……ひねくれるよな」
そう言って笑うと、愛生は、そんなこというなよ、と俺の背中を叩く。
「お前はいいよな……」
愛生はノンケ。俺たちとは違う世界に住む人間。
「32歳にもなって彼女すらいないオレを羨むなよ……」
愛生はまた、力なく笑った。
夜中の12時を回った。そろそろ帰ろうか会計を済ませ、2人で腰を上げる。
「また、袮緒と来ることあったら呼んでくんない?」
バーを出ながら、愛生に問う。
愛生は俺の言葉に、不思議そうな顔をした。
「なんか気になんだよ」
思わず、はにかむ。照れを隠すように、愛生の頭をくしゃっと撫ぜた。
「いいよ。でも、もう、怒らせるなよ」
そう言って、愛生もお返しとばかりに、俺の頭をくしゃっと撫ぜる。
2人でけらけらと笑いながら帰路につく。
袮緒のことが気になった。
素っ気ない感じで、何事にも無関心な様。
その裏側に隠れている袮緒の本性に心が擽られた……。
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